こだわりの生シイタケを多くの人に味わってほしい。
20日間かけてじっくり育てる「京都が育んだキノコ」
新たにポタージュスープを開発するなど、新しいことにも積極的に挑む同社の代表・中川頼司氏に、その経緯や想いを伺った。
ウレタン加工から始めシイタケ栽培に挑戦
2013(平成25)年、ウレタン製品の加工・販売を主事業として設立したアビアス京都。高速道路の料金所に設置されているETCゲートの開閉バーに緩衝材として用いられるウレタンの加工などを手がけてきた。そんな同社が2015(平成27)年、新たに乗り出したのが、しいたけの栽培事業である。高性能断熱建材用ウレタンで高断熱の栽培室を整備。温度と湿度を厳格に管理できる環境をつくり、2016(平成28)年、シイタケの菌床栽培を開始した。
「既存のやり方を真似するのは性に合いません。自分で試行錯誤しながら独自の栽培方法を模索しました」と語るのは、代表の中川頼司さん。検討を重ねた末に編み出したのが、「長期減水栽培」と名づけた方法だった。シイタケの表面がひび割れてしまう寸前まで水分量を抑えるとともに、通常約20℃が適温とされる栽培温度を約17℃の低温に維持。約2週間といわれる一般的な栽培期間の約1・5倍にあたる3週間近くかけてじっくり育てることで、芳醇でうま味の濃いシイタケの生産に成功した。「京都が育んだキノコ」と命名して京都府下の高級スーパーマーケットや青果店、直売所などで販売し、好評を博している。生産規模は、当初の1500菌床から年間1万5000菌床にまで増加した。
自社シイタケを使ってポタージュスープを開発
2020(令和2)年、新たに挑戦したのが、自社の「京都が育んだキノコ」を使ったポタージュスープの開発だった。
「栽培過程で間引きしたり、出荷には至らない小ぶりのシイタケを有効活用できないかと考えたのがきっかけです。これらは小さいけれど、その分濃縮された味わいが特長。その魅力を存分に生かせるポタージュスープの開発を思いつきました」と中川さん。野菜スープを製造している会社の協力を得て開発に着手。生シイタケをふんだんに使ってじっくり煮込んだポタージュに、さらにシイタケを丸ごと入れて「京都が育んだキノコの濃熟ポタージュ」を完成させた。
2020(令和2)年9月に発売すると同時に話題を呼び、その年の全国商工会連合会主催の「buyerʼsroom AWARD 2020」で中小企業庁長官賞を受賞。次いで、地域の農林水産物や食文化の魅力を活かした産品を発掘するコンテスト「フード・アクション・ニッポン アワード 2020」で1000を超える応募産品の中から「入賞100産品」に選ばれるという栄冠も獲得した。
商工会の力強い支援を得て商品開発を成功させた
アビアス京都の快挙を力強くサポートしたのが、南丹市商工会である。「商品開発から販売まで、さまざまな支援や助言をいただきました。特に大きな助力になったのが、『6次化プロジェクト活動支援事業』の採択を後押ししていただいたことです。本事業に採択され、専門家派遣などの支援を受けたおかげで、商品名やパッケージデザインも納得できるものを考案することができました」と中川さんは語る。
今後は「濃熟ポタージュ」をきっかけに「京都が育んだキノコ」にも関心を持ってもらい、相乗効果で両方の販売数を伸ばしていきたいという展望を語る中川さん。柔軟な思考で既存の枠にとらわれない挑戦を続ける。