独創的なアイデアで次々と新規事業を開拓する
金属加工業からスタートし福祉用具のレンタル事業に参入
福祉用具のレンタル・販売を主事業とする有限会社スマイルケアは、地域のケアマネージャーの厚い信頼と利用者の多様なニーズに応えるサービス力で、地域にその名を知られている。
前身の創業は、1966(昭和41)、工作機械に用いられる部品の切削加工から事業を興した。1992(平成4)年に高齢者・身体障がい者用の入浴介助用リフトを自社で開発・販売したのを機に福祉・介護産業に参入。2000(平成12)年に公的介護保険制度が施行されたのを機に、福祉用具のレンタル・販売業をスタートした。常に時代を読み、新たな事業に果敢にチャレンジすることで、今も成長を続けている。
独自の施工サービスで他にないレンタル事業を開始
「介護保険制度は、収益が国策に大きく左右されるビジネスのため、一事業に軸足が偏っていてはリスクが大きい。常々新たな事業の柱が必要だと考えていました」。そう語るのは代表取締役を務める荒井隆志さん。母親である先代から事業を引き継ぐために入社し、新規事業を模索していた時、大きな可能性を感じたのが階段昇降機のレンタル事業だった。「中でも当社の強みを生かせると思ったのが、カーブした階段に設置する曲線型階段昇降機でした」と語る。
通常直線的な階段には汎用の階段昇降機を設置できるが、戸建て住宅などではカーブのある階段が多く、各階段の形状に合ったレールを据え付ける必要があるため、フルオーダーが一般的だ。「当社は、各住宅の階段に合わせてレールを加工し、カーブを調整することで汎用の曲線型階段昇降機のレンタルを可能にしました」と荒井さん。金属加工業で培った技術を生かし、自社でレールの調整・設置を行うことで、施工期間の短縮とコストの低減も実現できるという。
さらに荒井さんは「もう一つ可能性を感じているのが、段差解消機のレンタル事業です」と語る。段差解消機は、車いすに乗ったまま段差を昇り降りできるのが特長。設置するには通常住宅改修が必要になる事が多いが、同社は段上に独自のステージを設けることで、住宅改修することなく設置できるようにした。「お客様のメリットを考え、技術とアイデアを駆使することで、汎用品を扱いながら他社との差別化を図ることに成功しました」と荒井さんは自信を見せる。
商工会のサポートを得て新規事業を軌道に乗せる
エネルギッシュに新事業を開拓するスマイルケアを支援するのが長岡京市商工会だ。「新たなビジネスを立ち上げるには資金調達が欠かせません。とりわけ大きな力になるのが、公的機関からの補助金や助成金です。長岡京市商工会は『こういう制度がありますよ』『こうした支援はどうですか』と積極的に紹介してくださるのでありがたいですね」と荒井さん。階段昇降機のレンタル事業においても商工会の後押しを受けて、京都府「京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業」の補助を獲得したことで、スムーズに立ち上げが進んでいる。
2018(平成30)年、荒井さんが代表取締役に就任したのを機に本格的に新規事業拡大に着手した。5月には東京営業所を開設。今後は関東にも商圏を拡大していく計画だ。スマイルケアのさらなる発展の起爆剤となるか、期待が高まる。
「地域に一店舗」を目標に、地域に密着して営業を展開
スマイルケアでは、階段昇降機、段差解消機のレンタル・販売に関わる新規事業に積極的に取り組む一方で、中核事業である福祉用具のレンタル・販売においても着実に地歩を築いてきた。
「年齢とともに身体に不自由がでてきたり、たとえ要介護状態になっても、できるかぎり自立した生活を送り、人生をイキイキと楽しんでいただきたい。当社では、それを支えるための福祉用具を貸与し続けてきました」と語る荒井さん。
同社では、歩行を支える杖から介護用ベッドまで幅広い商品ラインアップを揃えるとともに、地域包括支援センターやケアマネージャーと密に連携し、利用者のニーズに応じたきめ細やかな対応を実践している。
しかし介護保険業界には多くの企業が参入しており、品揃えやアフターサービスなどでは差別化しにくいのが現状だ。
そうした中で今後も事業を拡大するための戦略として、営業店舗の増設を考えているという荒井さん。「『各地域に一店舗』を構えて地域に密着し、利用者の皆様にとって今以上に身近な存在になりたい」と語る。
専用WEBサイトの開設、独立法人化で新規事業の拡大に挑む
一方で、階段昇降機、段差解消機の事業拡大にも引き続き力を注いでいく。狙いを定めているのが、関東地域への商圏拡大だ。
「階段昇降機、段差解消機の注文は、個人のお客様から直接WEBサイトを通していただく場合はほとんどです。京都地域にこだわらず、より母数が多く、受注を見込めるところで勝負したいと考えています」と荒井さん。
東京営業所の開設を足がかりに、関東から新潟方面へ、さらに京都府以西、沖縄県にまで受注エリアを広げていくことを考えている。
それに向けて、階段昇降機、段差解消機を紹介する専用WEBサイトを開設する。さらに2018(平成30)年夏には、同事業を分社化し、独立採算体制で事業拡大に挑んでいく。
斬新な発想と技術力で、段差解消機にかかるコストを大幅に低減
「階段昇降機と段差解消機の両新規事業のうち、特にスマイルケアの強みを発揮できると考えているのが、段差解消機です」と言う荒井さん。
段差解消機を設置する場所の中でも特に課題になっているのが、外構部の階段だ。「段差解消機の設置面は、車いすで乗った時の安定性を確保するため、水平であることが必須条件。ところが外構部の地面は多くの場合、水はけを良くするために傾斜がついています。そのため階段を取り外すなどの大掛かりな改修が必要な上、段差解消機が必要なくなった時に元の状態に戻すのも難しくなります」。
それに対し、スマイルケアでは、階段を上り切った位置にステージを設置することで簡単に水平面を確保するという新しいアイデアで、住宅改修や設置工事にかかるコストを大幅に低減することを可能にした。
機械部品の切削加工業から事業を興し、介護・福祉事業に本格的に参入するため、分社独立する形でスマイルケアを設立した。現在も別会社で金属加工業を継続しており、スマイルケアと連携することで、質の高い設置工事を実現している。
「将来的には介護福祉分野にこだわらず、金属加工・各種機器の設置に関わる技術力を強みとして、『レンタル』を切り口に新たな事業を開拓したい」と、荒井さんは展望する。新しい発想と情熱にあふれた新社長のリーダーシップで、スマイルケアのさらなる成長が期待される。