京都府商工連だより
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株式会社トミヤマ

誇りを持って次代に柿渋を伝えたい。

株式会社トミヤマ とみ やま ひろ
株式会社トミヤマ 代表 冨山 敬代 氏

オリジナル商品のマウススプレー「柿渋口水」

 日本の3大生産地の1つである南山城地域で柿渋の製造業を営む株式会社トミヤマ。時代とともに需要が減る中、新たな用途を見出しながら今日まで存続してきた。現在、5代目として新しい商品開発に挑む冨山敬代さんに柿渋を次代に伝える取り組みと想いを伺った。
株式会社トミヤマ
〒619-1412 京都府相楽郡南山城村南大河原阿僧6-5
TEL:0743-93-1017
FAX:0743-93-0828
https://www.kakishibu.com/

山城地域で130年間柿渋を作り続ける

 株式会社トミヤマは、1888(明治21)年、国内で指折りの柿渋産地として知られた京都府山城地域に創業して以来、柿渋を製造・販売し、130年以上の歴史を数える。「宇治茶の栽培が盛んな山城地域では、茶畑を霜から守り、獣や虫の被害を防ぐためにタンニン豊富な渋柿の木が植えられ、それが良質な柿渋の材料となりました。私がまだ幼少の頃は柿渋を作る工場が加茂でも駅近く、船屋通り沿いに2軒ありました。その船屋通り沿い全体に柿渋の匂いが漂っていたものです」と往時を振り返ったのは、5代目を務める冨山敬代さん。
 石油化学製品の普及に伴って柿渋の需要は激減。柿渋屋は従来の柿渋製品に替わって日本酒の醸造用に柿渋を提供したり、建築用塗料を開発するなど、時代の変化に対応して多様な用途を模索しながら今日まで存続してきた。

企業とコラボ
新たな柿渋商品を開発

 「柿渋の主成分である柿タンニンは、タンパク質除去や収れん作用、重金属の吸着、防腐・抗菌などさまざまな用途に使用できます」と冨山さん。こうした柿タンニンの多様な作用に着目し、新たに高分子タンニンを抽出・精製。現在、天然由来の機能性素材として化学・製薬分野をはじめとした幅広い分野に提供している。さらには企業から依頼を受け、柿タンニンを配合した商品の開発にも力を注いでいる。
 同社の強みは、高品質な柿タンニンを提供できることはもちろん、柿渋製造で培ってきた豊富な知識・ノウハウと、これまでの先生方のエビデンスを基に新商品開発全体のコンサルティングを行えるところにある。「昨年秋に奈良県立医大による『柿タンニンが新型コロナウイルスを不活性化する』というとてもうれしいニュースがありました。商品開発においては、柿タンニンの短所をいかに長所へと変換できるか、企業様と試行錯誤を重ねてきましたが、なかなか思うようにいかないこともありました。しかし、毎日が勉強になることばかりで楽しんでいます」と冨山さんは話す。これまでに化粧品、歯磨き粉やハンドクリーム、消臭スプレーなど衛生品から雑貨までさまざまな商品を共同開発してきた。
 さらには自社でオリジナル商品の開発にも取り組んでいる。柿渋の柿タンニンの持つ消臭や抗菌などの作用を活かした柿渋ふきんや柿渋せっけんを独自に開発、商品化してきた。2021年、最新商品として柿タンニンを配合した口腔内用スプレー「柿渋口水」を発売し、大きな反響を呼んでいる。

商工会との長いつきあいを支えに次代に柿渋を伝える

 常に新たな販路を模索し、新しい用途・商品を生み出すことで厳しい経営環境も乗り越えてきたトミヤマ。そうした同社の歩みを支えているのが、南山城村商工会だ。商工会とは加茂町商工会設立の時から冨山さんの祖父の代から深く関わってきたという冨山さん。「南山城村商工会とは、10年程前から私が代表になってからのおつきあいです。それまでは加茂町商工会の会員でした。何か困ったことがあればまずは商工会に問い合わせます。小さなことにも丁寧に対応してくださり、きめの細かくケアしてくださるのが良いところ。本当にありがたいと思っています」と明かす。
 今後は、若い人にも柿渋の良さを知ってもらうため、身近な商品を開発していきたいと展望を語る。「京都、山城の特産品として誇りを持って柿渋を次世代に伝えていくのが私の役割だと思っています」と冨山さん。柿渋の未来を考え、決意を新たにしている。