京都府商工連だより
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株式会社 福井

使いやすい「抱っこひも」で、お父さんの育児参加を応援したい。

株式会社 福井 代表取締役/CEO
ふく たか ひろ
 京田辺市で創業し、スポーツ・バイク用のバッグのOEM生産を手がける株式会社福井。代表取締役・CEOの福井隆博さんは、自身の育児経験を元に、オリジナルの「抱っこひも」を自社開発。大きな反響を呼んでいる。福井さんに、新商品開発の経緯や、新規事業に懸ける思いを伺った。

開発した抱っこひも商品

赤ちゃんのヒップシートになるワンショルダーバッグ

株式会社 福井
〒550-0014
大阪府大阪市西区北堀江 1-5-2
四ツ橋新興産ビル 1108 号
https://pairfook.jp/

スポーツ・バイク用バッグのOEM生産事業を展開

 株式会社福井は、2017(平成29)年の創業以来、スポーツ用バッグやバイク用バッグの受託生産を主事業としている。
 代表取締役・CEOを務める福井隆博さんは、20年近く企業でバッグの海外生産事業に携わった後、独立・起業した。それまで中国をはじめアジア圏で生産拠点を開拓してきた経験とノウハウ・ネットワークを生かし、日本の厳しい品質基準や、多様な要望に対応できるOEM生産体制を構築。多品種小ロット生産や、多様な企画・素材・デザインの商品を提供し、大手スポーツメーカーやバイクメーカー、関西に拠点を置くスポーツブランドなど、幅広い顧客の信頼を獲得している。

使いやすさを追求した抱っこひもを自社開発

 それまでOEMを手がけてきた同社が、新規事業として自社オリジナルブランド「PairFook ペアフック 」「抱っこひも」の自社開発に挑戦した。きっかけは、福井さん自身が育児を経験したことだった。
 「既存の抱っこひもを使ってみて、こんなにも扱いにくいのか!と、驚きました。そこから母親と父親の両方にとって、もっと使いやすい抱っこひもを作れないかと思い立ったのが、始まりです」
 まずは自身が使いづらさを感じたポイントを洗い出し、それを解消する機能やデザインを徹底的に追求した。
 「また子育て世代のコワーキングスペースを営む企業の協力を得て、子育て中のお母さん・お父さんに試作品を見ていただいてご意見をいただき、改良を重ねました」
 こうして完成したのが、PairFookの「抱っこひもクールタイプ」だ。「5秒で着けられて、5秒で降ろせる」をコンセプトに、着脱しやすさを追求。前開きファスナーで、肩・腰のひもの長さも簡単に調節できる。肩や腰に負担をかけないパットの形状やオールシーズン快適な全面メッシュ素材など、すべてに福井さんのこだわりを詰めこんだ。
 「スポーツやバイクといった強度や機能性、安全性が要求されるバッグを作ってきたことが、抱っこひも開発でも強みになりました」
 その後、A4サイズのバッグに収納できる「抱っこひもコンパクトタイプ」や、ワンショルダーバッグとしても使える2WAY仕様の「抱っこ楽ちんバッグ」も開発・発売した。現在は、ECモールで販売するほか、京田辺市のふるさと納税にも採用されている。京都府内外の自治体からの注文も増えているという。

補助金申請から連携紹介まで商工会の支援が力になった

 同社が初めての事業に取り組むにあたり、大きな力になったのが、京田辺市商工会だった。
 「商工会から京都府の金融経営一体化事業に取り上げていただいたことで、補助金申請や金融機関・開発企業の紹介など、多岐にわたる支援を受けることができました。商品開発後も展示会出展やふるさと納税出品に声をかけていただいたことが売上につながっています。商工会さんの手厚い伴走支援なしに、ここまで来ることはできなかったと思います」

日本の厳しい品質水準に応えられる海外の生産工場を開拓

 株式会社福井を創業した福井さんと「カバン」との出会いは、約30年前、世界的なファスナーメーカーだった。
 「入社してすぐ、当時新たに立ち上がったばかりのカバンのOEM生産の部署に配属され、そのわずか4ヵ月後、中国の生産工場に出張したのが始まりでした」
 以来、中国をはじめ、東南アジアなどアジア各国を飛び回り、生産を委託できる工場の開拓に力を注いだ。難しかったのは、日本の厳しい要望に応えられるアウトソーシング先を見つけることだった。
 「同一規格のものを安く、大量に製造することに長けている工場は数多くありますが、日本のお客さまが求めるのは、わずかな傷一つ、ほんの少しのサイズや縫製のズレも許さない高い品質水準です。それに対応できる工場を探すのは、至難の業でした」
 福井さんは、そうした生産工場を見つけ、信頼関係を築いて一つひとつ取引先を増やしてきた。その経験と実績、築いてきたネットワークが、現在も強みになっている。現在は、強度と機能性、さらにデザインにおいても高い要望に応える他、企画の提案や多品種小ロット生産にも対応し、多くの顧客と良好なパートナーシップを結んでいる。

自社の新たな柱となる事業として、抱っこひもに着目

 そんな同社にとって大きな転機になったのが、コロナ禍だった。
 「お客さまからの注文が、ことごとくキャンセルや生産延期となり、お客さまの都合に左右される事業に特化している危うさを痛感しました。そこで、これまで培ってきたノウハウを生かし、二本目・三本目の柱となる事業をつくっていく必要があると考えました」
 時を同じくして、福井さん自身にお子さんが誕生。育児に参加したことが、「抱っこひも」に着目することにつながった。
 「既存製品を見てみると、バックルやファスナーなど、当社が扱っているバッグのノウハウが生かせると気づいたのです。そこで思い切って、自社でオリジナルの抱っこひもを開発しようと決意しました」
 福井さんのこだわりに加え、子育て中の父親・母親から寄せられた多くの意見を反映させ、使いやすさを徹底的に追求した「抱っこひもクールタイプ」を完成させた。その後、第二弾として「抱っこひもコンパクトタイプ」、さらに第三弾として「抱っこバッグ」を開発していく。

子育ての幸せな記憶とともに長く使える「抱っこバッグ」

 開発してきた商品の中で、福井さんの想像を超える反響を呼んだのが、「抱っこバッグ」だ。抱っこひもとショルダーバッグが一体化した2WAY仕様が最大の特長。ふだんはワンショルダーのバッグとして使い、必要に応じてバッグ部分に子どもを座らせ、抱っこひもとしても活用できる。
 「歩き始めたばかりの我が子を遊園地に連れて行ったことが、この仕様を思いついたきっかけでした。子どもは、張り切って『自分で歩く!』と言ったかと思えば、すぐに『抱っこ!』とせがむことの繰り返し。そのたびに抱っこひもを出すのは面倒だし、使わないと荷物になります。もしバッグが抱っこひもの代わりになれば、その手間や荷物を減らせると考えました」
 「抱っこバッグ」は、バッグとしての機能を備えつつ、子どもを座らせる座面に滑り止めクッションをつけたり、ずり落ちない形状にすることで、抱っこひもとしての安全性も確保している。また子どもを抱いている時に片手で荷物をスムーズに取り出せる構造にも工夫を凝らしている。
 「子どもがすっかり大きくなった今でも、自分用のバッグとして使い続けています。我が子を抱いた時の匂いや手触り、重さ、そんな幸せな記憶とともに長くバッグを使い続けられるのも、耐久性や強靭さを追求した当社の商品だからこそです」と福井さん。
 現在、「PairFook」ブランドでは、「抱っこひも」や「抱っこバッグ」のほか、オリジナルのリュックやトートバッグ、おむつポーチやサコッシュなどを展開。各種ECモールで販売する他、「抱っこひも」のレンタルも行っている。
 「課題は、認知度の向上です。もっと多くの方に当社の抱っこひもを知っていただきたい」と福井さん。今後は商品PRにも力を注いでいく。