京都府商工連だより
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Hair Resort Lipe

移動美容室の成功をもって、お客様と業界、地域に貢献したい。

Hair Resort Lipe おか ゆう すけ
Hair Resort Lipe 代表 岡田 勇介 氏

奈良県で展開中の訪問美容サービス『移動美容室せいか』

 2013(平成25)年4月、相楽郡精華町にオープンしたHair Resort Lipe。リゾートをコンセプトとした時間のゆっくりと流れる店内の雰囲気とは裏腹に、移動美容室をはじめ、新たな事業にアグレッシブな姿勢で取り組んでいる。「ずっと走り続けてきた」と語る代表の岡田勇介氏にお話を伺った。
Hair Resort Lipe
〒619-0244 京都府相楽郡精華町大字北稲八間小字上坪37番地
TEL:0774-95-0070
https://www.hair-resort-lipe.com/

仕上がりのクオリティとリラクゼーションを追求

 “タイの最後の秘境”とも言われる島を店名に掲げるHair Resort Lipe。「リゾート地に訪れたような、寛げる場所にしたい」との思いからリラクゼーションを追求し、他店との差別化を図ってきた。マッサージチェアを備えた個室のシャンプー台では、他店平均の10分を大きく上回る、20~30分をかけて丁寧にサービスを行う。セット面は他の客の姿が見えないパーテーション付き、店内奥には子どもが遊べるキッズルームも設置しており、誰もがリラックスして施術を受けることが可能だ。
 しかし代表の岡田勇介さんに言わせれば、それらは「リゾート」というコンセプトに沿って、「ここに来て良かった」と思ってもらえるようプラスしてきた、付加価値の一つひとつに過ぎない。「美容室の真の価値を決めるのは、お客様の要望に誠意を持って応えることと、手を抜かない施術だと考えています。カットというのは、何かにヤスリで磨きをかけるようなもので、終わりはありません。『これくらいでいいかなあ』ではなく、プロである私自身が『できた』と納得できるところまでやることにこだわっています」。独立前から変わらぬそのスタイルで、幅広い年齢層の心を掴んできた。

30年後を見据え 『移動美容室せいか』を始動

 そんな岡田さんが2019(令和元)年9月にスタートさせたのが、『移動美容室せいか』だ。
 これは、ヘアカットからオートネイル、フェイシャルエステ、ヘッドスパまで、店舗と同様の美容設備に加えて車椅子のまま入れる昇降リフトも備えた、シニアのための“動く美容室”。きっかけは、70歳代の顧客の言葉だったと言う。「『免許を返納したから、もう来られなくなるの』とおっしゃるのを聞いて、寂しいなと感じました。同時に、超高齢化と人口減少が進む30年後、美容院は“待ちの商売”ではなくなるのではないかと思ったんです。人が集まる場所、たとえば高齢者施設にこちらから出向けば、来店できなくなったお客様と別れなくても済むし、売上の維持にもつながると考えました」。
 現在は、奈良県の高齢者福祉施設や過疎地で展開している。自治体ごとに法律などが異なるため、事業拡大には地道な努力を要するが、「すでに楽しみにしてくれているお客様がいるんですよ」とうれしそうに語る岡田さん。店舗での営業と並行して、各地での営業許可申請に奔走中だ。

商工会の支援を通じて経営者として成長

 29歳で創業し、着実に売上を伸ばしながら、新たな美容室のあり方を模索する岡田さん。そのプロセスを共に歩んできたのが精華町商工会だ。岡田さんは、「リラクゼーション空間としてのバージョンアップや『移動美容室せいか』を形にできたのは、精華町商工会から、補助金の情報や申請に関する助言をいただけたからこそ」と強調する。
 中でも大きな収穫は「申請に伴う事業計画書の作成を通じて今やるべきことを的確に判断できるようになったことと、利他の精神を持って行動できるようになったこと」だそうだ。『移動美容室せいか』に関しては、コロナ対策の一環として、高齢者専用ルームや非接触でヘアスタイルの説明ができるモニター内蔵のミラーなどを搭載する予定。さらに、自然災害等が発生した際、地域住民に避難所や緊急の調理場などとして提供できるような機能も付加していくと言う。まだ見ぬ“たくさんの笑顔”のために、岡田さんの挑戦は続く。