京都府商工連だより
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株式会社設計京北

自然災害から山、人を守る治山に測量で貢献する

株式会社設計京北 代表取締役むら たけし
 京都市北部、良質な杉の産地として知られる京北地域で、山林に特化して測量設計、コンサルティングを行う株式会社設計京北。山林測量に関する豊富な実績に裏づけられた高い提案力で多くの公共工事を受注している。さらに事業拡大を目指し、新たな技術の導入にも取り組む同社について、代表取締役 野村 武さんに伺った。
株式会社設計京北
〒601-0251 京都市右京区京北周山町泓21-2
TEL:075-852-8000

山林に特化し測量設計を手がける

 株式会社設計京北は、京都府を中心に近畿一円で主に山林や中山間地の測量設計を行っている。林道や市道の整備や治山ダムの建設、またグラウンドやキャンプサイトなど屋外施設の土木工事において測量から計画、設計までを担う。
 もともと京北町役場に勤め、技術者として森林土木を担当していた代表取締役の野村武さん。その技術を生かそうと独立し、1997(平成9)年、同社を設立した。
 「当社の強みは、長年にわたって蓄積してきたノウハウに基づいた高精度な山林測量技術に加え、最適な土木計画・設計を提案できるところにあります」と語る野村さん。土地の形状が複雑な山林の測量には、経験に裏づけられた専門知識と技術が必要とされる。とりわけ山中は登記簿上の面積と実測値に10倍以上の差があったり、そもそも登記簿が存在しないことも少なくない。そうした山中での土木工事において、同社は山林を測量するだけでなく、測量士が山を歩きながら形状や傾斜、木々の状態などを自らの目で確かめ、最も効率的に建設できるルートや、豪雨や地震の際に土砂崩れなどの起こりにくく、しかも自然環境に負担を与えない場所を見つけ出し、最適な設計図を描くことができる。こうした実績が認められ、地元の京都府・京都市を中心に、大阪府など近畿圏で多くの公共事業を請け負っている。

労力低減と効率化を実現する新たな測量法を開発

 近年、林業の衰退によって管理が行き届かないまま放置された森林が増加。その対策のため、市町村が仲介して森林の所有者と林業の事業者を結びつけ、森林管理や施業を促進する制度が2019年4月から施行された。それにあたって必要になっているのが、どこからどこまでが誰の所有なのか、“境界”を明らかにすることだ。
 「こうした新たな森林測量のニーズに応えていきたい」と野村さん。そのために新たな技術の導入も積極的に進めている。その一つとして2018年(平成30年)に開発したのが、GPS測量技術を使った新たな山林測量法だ。
 「GPSを利用して経度緯度を測定し、位置を測量する『GPS測量』は、高速かつ高精度な測量が可能になることから、近年導入が進んでいますが、山林での活用はまだ多くありません」。同社はこの新しい測量技術を用いることで、測量の労力をおよそ2分の1に低減しただけでなく、スピードや精度も格段に上げることに成功した。これにより自社の測量能力を高め、今後さらに増加が予想される放置山林の測量の需要に対応したいという。

商工会の支援を受け新設備・技術を導入

 設備や技術を導入し、新たなことに挑戦するためには、資金が欠かせない。そうした資金調達をはじめ、多様な側面から設計京北の経営をサポートするのが、京北商工会だ。「今回の開発が『平成30年度経営革新計画』の承認企業に選ばれた際には、毎日のように相談に乗ってくださり、事業計画の立て方から申請書の書き方までアドバイスをいただきました。そうした親身な支援がありがたいですね」と野村さん。その他、労務・税務の管理など経営に関わるサポートも心強いと語る。
 「自然災害が増えている近年、治山や治水の必要性はますます高まっています。今後は即戦力となる人材を増やしてそうしたニーズに応えていきたい」と展望を語った野村さん。同社のさらなる成長が期待される。

自然災害後の復旧工事でも力を発揮している

 「STIHLの森京都(府民の森ひよし)」の指定管理者を受託するなど、地域でさまざまな事業を請け負っている同社。
 放置山林の問題と並んで、山林や中山間地域において近年、深刻さを増しているのが、自然災害である。京都府下でも毎年のように台風などによる河川の氾濫や土砂崩れなど甚大な被害が報告されている。こうした災害後の復旧工事にも設計京北は欠かせない存在となっている。
 「被災した場所をいち早く復旧させることはもちろん重要ですが、安易な工事ではかえって二次災害が起きる危険性もあります。それを防ぎ、安全な治水・治山計画を立てる必要があります」と野村さんは言う。
 下流で河川の氾濫を防ぐにはどの場所に治山ダムを建設すれば良いか、土砂崩れが人家を襲わないよう整地するにはどうすれば良いかなど、同社の経験と実績が大きな力を発揮している。

自然災害の予防にも貢献したい

 「今後は、当社の技術や経験を活用し、『災害の防止』にも貢献したいと考えています」と野村さん。
 災害が起きる前に河川の氾濫や土砂崩れなどの危険ヵ所をいち早く発見して自治体に報告し、治山工事を提案することも、山を知り尽くした同社だからできることだ。
 「土木工事計画を依頼された時にも、測量や地盤などを観察した結果から『この場所は土砂崩れに気を付けた方がいい』、『災害予防のためには、計画された場所とは違う場所の工事を優先させた方がいい』などとアドバイスし、災害を未然に防ぐ一助となれたらいいですね」

人材確保、新技術の導入に取り組み、さらなる成長を目指す

 森林測量や自然災害後の復旧、災害予防など事業が広がりつつある中、同社にとって一番の課題は、人材確保だという。現在、同社には野村さんを筆頭に、7名の社員が在籍。全員が測量士の資格に加え、林業に関わる専門技術者である林業技士の資格を取得し、山間地での測量や土木工事の計画・設計に豊富な実績を積んでいる。
 「近年頻発する大規模災害後の復旧工事などでは、自治体などからの依頼が集中し、当社だけでは請け負えないことも少なくありません。京都府下の同業他社と協力するとともに、自社でも今以上に人材を確保し、そうした不測の事態にもすべて応えられるようになりたいと考えています」と野村さん。そのためにはさらに即戦力となる人材を必要としている。
 一方で、自社の技術力向上と人材不足を補う方策として、新しい技術や設備の導入にも積極的だ。
 「ドローンを使った三次元測量など新たな測量機器も登場しています。他に先駆けてそうした新たな技術を導入することで、競争力をつけていきたい」と言う。
 これからの成長を目指し、新しい試みにも意欲的に挑戦し続けている。