京都府商工連だより
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西田製凾株式会社

お客さまのお役に立ち、社会に貢献したい。
その思いで物流の革新に挑む

西田製凾株式会社 代表取締役社長斉藤 昌彦
取締役副社長斉藤 妙子
 京都府南部・久御山町を拠点に約70年にわたる歴史を刻んできた梱包・輸送資材メーカーの西田製凾株式会社。現社長の斉藤昌彦さんが入社したのを機に、斬新な発想で「物流を革新する」商品の開発に取り組んできた。そんな斉藤さんに、現在同社が取り組む新たなチャレンジについてお聞きした。
西田製凾株式会社
〒613-0036 京都府久世郡久御山町田井新荒見140番地
TEL:0774-43-5394 FAX:0774-43-5390
http://www.nishidaseikan.com/

樹脂を使った軽量で強い物流コンテナを開発

 「梱包資材の製造に留まらず、お客さまの物流改善に貢献する」ことを使命に掲げ、西田製凾株式会社は、1954(昭和29)年の創業以来、物流に新風を吹き込む梱包・輸送用のボックスやコンテナを製造し、顧客の心をつかんできた。
 顧客の物流に革新的な変化をもたらしたのが、「再坊」シリーズだ。戦後長い間、梱包・輸送の容器は木箱か段ボールが主流だった。しかし木箱は丈夫だが重量があり、一方の段ボールは軽いが耐圧強度や耐水性に限界がある。そこで両者の弱点を補うべく、木枠にプラスチックなどの樹脂素材を壁面に用いたこれまでにない容器を考えついたのが、1981(昭和56)年に入社した斉藤昌彦さんだった。折しも世界的に環境問題が深刻化し、大手企業を中心にリサイクルが重視されるようになってきた時期。そうした時流を読んだ斉藤さんは、続いて何度も繰り返し使うことのできる画期的なコンテナ「再坊」を開発した。
 「『再坊』はオール樹脂製で、非常に軽量ながら水や湿度に強く、4t以上の圧力に耐えられます。加えて留め具なしに簡単に組み立て・解体でき、折りたたむと容積を5分の1にまで減らすことができるのも特長です」と斉藤さん。簡単に組み立てられる上、省スペースで持ち運びに便利で、しかもリユースできる。コストや環境への配慮はもちろん、女性でも作業できるほどの省力化を実現し、物流の作業現場を革新する商品となった。現在、大きさや形、素材など顧客の要望にフレキシブルに対応し、機械・電気機器・材料メーカーの他、アパレル、医薬品、食品など多様な分野に顧客を広げている。

培ってきた製函技術を生かし防災・災害関連商品を開発

 「自然災害などの甚大な被害を目にして、何か貢献することはできないかと考えるようになりました」と斉藤さん。近年西田製凾は、物流とは異なる新たな事業分野の開拓にも乗り出した。長年培ってきた製函のノウハウを災害現場で役立てるべく、防災関連商品の開発に取り組んでいる。その一つが、携帯用簡易トイレ「はな丸」だ。PP樹脂製のボックス型簡易トイレで、非常用袋を取り付けるだけですぐに使用できる。水や重さに強く、組み立てが容易、軽量で持ち運びやすいなど、同社の製函の強みを存分に生かした商品は、避難所などで大きな役割を果たすとして、発売後すぐに自治体などから多くの引き合いを得る結果となった。
 その後、折りたたみ式更衣室、可動式パーテーション、セキュリティボックス、簡易・折り畳みベッドやテーブルなど、災害現場や避難所で役立つ商品を次々と増やしている。

商工会の支援で新商品開発・販促を推進

 防災・災害関連の新規事業においては、従来とは異なる商品開発や販路開拓が必要になる。そうした西田製凾の挑戦に寄り添い、サポートしているのが、久御山町商工会だ。
 「商工会で実施している補助事業や展示会の情報など、当社では把握しきれない情報を紹介してくださるなど、きめ細かい支援がありがたいですね。新商品の防音機能付き折りたたみ式更衣室『ひとりっ個』の開発・販売にあたっても、久御山町商工会の後押しで、機能性試験や販売促進のための補助金を獲得することができました」。
 同社は現在、これまでとは異なる分野で活用する新たな容器開発を進めている。新しい領域を切り拓く西田製凾の挑戦はこれからも続く。

被災者に寄り添い、多彩な防災関連商品を開発

 梱包・輸送用の製函業で培ってきたノウハウを生かし、新たに防災関連商品の開発に取り組んでいる西田製凾。被災者に寄り添って考えることで、災害現場や避難所で求められる商品を次々と生み出している。
 携帯用簡易トイレ「はな丸」に続いて考案した和式トイレ用簡単組立便座「便利だワ」は、学校など避難所の多くでいまだ和式トイレが主流の現状を見て思いついた商品。和式トイレにはめ込むだけで、簡易の洋式トイレとして使用できるという優れものだ。さらに手すりをつけた「座らくらく」、コンパクトに折りたためて手軽に携帯できる「はな丸・おりたためーる」と、後続商品も生まれている。
 「軽量で簡易に折りたためるという当社の製函の強みを生かして、他にも簡易折りたたみベッド『オリネ』や折りたたみテーブル『プラ卓』、可動式パーテーション『気くばリア』なども考案しました」と斉藤さん。その他、給水コンテナや土のう入れ、フロアシートなど防災関連商品は、15種類以上に及ぶ。
 さらに最近、災害現場に留まらず、多用途にニーズが広がっている。
 「鍵のついた簡易のセキュリティーボックス『お守りします』は、当初災害避難所で活用する保管庫として発案しましたが、近年、自治体などでの重要書類の保管や、病院でのカルテの保管など、避難所以外の場所でもお使いいただいています」と斉藤さん。
 折りたたみ式の簡易更衣室「自・空間」も、工場や工事現場、イベント会場などで使われる例も増えているという。こうした防災以外のニーズに応えるべく開発したのが、新商品の防音機能付き折りたたみ式更衣室「ひとりっ個」だ。自宅での楽器演奏など、避難所での更衣以外の目的で使われることも想定している。

多様な販売チャネルで1個から大量生産にまで対応

 多岐にわたるニーズに応えられる背景には、西田製凾の販売チャネルの多様化も関係している。「法人のお客さまや自治体などから直接注文を受け、オーダーメイドや大量生産のご要望に応えるだけでなく、インターネット通信販売サイトから1個単位でもご注文を受けつけています」と斉藤さんが語る通り、最近は、インターネットからの個人注文も増えているという。
 「さまざまな販売チャネルのお客さまからの『こんなものがあったらいいのに』という声が、新商品開発の源泉です」と言う斉藤さん。商品開発は、9名からなる開発チームが担っている。
 「お客さまの声などから新たな商品のアイデアが生まれたら、商品ごとにプロジェクトチームを編成し、それを形にしていきます。毎週月曜、発表会を開催し、プロジェクトごとに進捗を報告。互いにアイデアや改善点を話し合い、さらに磨きをかけていく中で商品ができあがっていきます」。

製函業と防災関連業を両輪に、さらなる事業拡大を目指す

 防災関連の新規事業の成長著しい西田製凾だが、従来の梱包・輸送に関わる製函事業もおろそかにしていない。
 「再坊」をはじめ、さまざまな素材や形、機能を有する新しいコンテナの開発に注力する一方で、木箱や段ボールの製函も続けている。加えて、梱包から配送までトータルで委託したいという顧客の要望に応え、梱包業、倉庫業、運送業も担っている。「『お客さまの物流に貢献する』。そのためにお客さまのあらゆるご要望にお応えしたい」との思いからだ。
 こうして幅広い商品を揃え、顧客の多様な要望に応える中でノウハウが蓄積され、それが新たな商品のアイデアにもつながるという。
 古きを温める中にこそ新たな知を見出す。その姿勢を崩すことなく、梱包・輸送に関わる製函業と防災関連事業を両輪に、さらなる事業拡大を目指していく。