京都府商工連だより
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ふくふく庭

「高い要求にも応えられる技術を誇りに、挑戦し続ける」

ふくふく庭 代表福井 隆史氏 福井 純子
 ふくふく庭は、造園と剪定の高い技術を強みに、外構に関わる幅広い事業を展開し、顧客の高い信頼を獲得している。職人集団をまとめ、規模の大きな施工・管理や特殊伐採など新たな事業にも果敢に挑む。そうした事業にかける思いを代表の福井隆史さんに伺った。
ふくふく庭
〒619-1126 京都府木津川市加茂町尻枝下程城54
TEL:0774-76-0361 FAX:0774-76-0362
http://fukufukutei.net/

技術力を強みに造園業を展開

 木津川市加茂町を拠点に、造園の設計・施工から管理まで外構に関わる幅広い業務を請け負うふくふく庭。代表の福井隆史さんが造園業と出合ったのは20代前半、植木屋でアルバイトをしたのがきっかけだった。その魅力に惹かれ、地元の造園会社に就職。5年間で造園や剪定の技術を磨き、2005(平成17)年、独立してふくふく庭を開業した。現在は、造園や剪定はもちろん、門柱やフェンス、石塀、アプローチやテラス、ロックガーデンの施工など、和洋を問わず多様な外構工事を手がけている。

 また近年、新たな事業として拡大しつつあるのが、マンションや公共施設の管理業だ。福井さんと同じく優れた技術を持つ他業者と連携して「職人集団」を組織。「ふだん個人や少数で仕事をしている職人たちをまとめることで、規模の大きい施設の外構工事や造園、維持管理を請け負うことが可能になりました」と、福井さんは語る。

特殊伐採など新事業に挑戦

 ふくふく庭の強みは、植木に関わる豊富な知識と高い技術に裏づけられた質の高い施工にある。例えば植木を形良く剪定する際には、やみくもに刈り揃えるのではなく、若葉のついた表面の枝を残しながら、奥の太い枝を切るなど細かい工夫を凝らす。「剪定したことが判らないように仕上げるのが腕の見せどころ。枝が伸びることを想定し、剪定直後だけでなく半年後も美しい樹形を保つ切り方をしています」と福井さん。とりわけ洋風の植木の場合は、自然な樹形を保ちながら大きさを維持する刈り方を考える。「勢いよく伸びる枝を目利きする力が必要です」。和洋を問わず多様な植木の特性を熟知するとともに、水はけなど土壌の性質や日当たりなども考慮し、植えるべき木や場所を顧客に提案することも多く、その質の高いていねいな仕事ぶりに顧客の信頼は厚い。

 現在注力しているのが、伐採業務だ。とりわけ間近に建物があったり、山の斜面に生えていて根元から切り倒すのが難しい木や重機を持ち込めない場所での伐採など、高度な技術を必要とする特殊伐採のニーズが年々高まっているという。「木の重さ、粘り、折れやすさなど植木の特性を見極め、安全かつ効率的に伐採する方法を考えるのが難しいところです」と福井さん。幹に切り込みを入れる位置や深さを綿密に考え、時には20mもの大木に登り、上の枝から順番に落としていくなど、常に危険を予測しながら周囲の物も、また人も傷つけずに木を切り倒す。「経験を積み重ね、技術、安全性はさらに高まっています」と自信を見せる。

商工会の支援を新事業の足がかりに

 新しい事業に取り組む際には、設備の導入や広告宣伝などの先行投資が必要になる。そうした経営に関する相談相手になっているのが、木津川市商工会だ。「商工会の青年部でも活動しているので、経営支援員の方とは気心知れた仲。ふだんから『こんなことを考えている』などと事業についてよく話します」と福井さん。特殊伐採業務を手がける際にも、補助金を紹介された。「申請書の書き方など、きめ細かくアドバイスしてくれるのがありがたいですね」。

 補助金を活用し、周辺の山間地域に新聞の折り込み広告を配布したところ、大きな反響を得た。特殊伐採のニーズの高さを知り、事業を進める足がかりになったと感謝の言葉を口にする。また経営支援員の提案から「知恵の経営報告書」の作成にも挑戦。2017(平成29)年度の認定を受けた。

 「今後は軌道に乗り始めた特殊伐採事業をさらに拡大していくつもりです」と展望を語った福井さん。目下の課題は、人材不足だという。「私の理念を受け継ぎ、自分で施工するだけでなく、職人集団をまとめ、現場で監督となって工事を進められる人材を育てたい」。人とともに事業を大きく育てることが、次の目標だ。

「剪定のプロ」にしかできない仕事で顧客を増やす

 「当社に依頼されるお客様の多くは、庭に対してこだわりや深い愛着をお持ちです。そうした方々の思いに応え、喜ぶ顔を見るのがやりがい。そのためにどんな高度な要求にも応えられるよう常に技術を磨いています」と語る福井さん。

 その技量が垣間見えるのが、冬場に欠かせない松の剪定だ。松の葉は芽吹いてから2年ほどで茶色く枯れるが、放置すると下から生えてきた若葉の日当たりを遮る上、見た目にも美しくない。そこで必要となるのが、古い葉だけを揉むようにしごき取る「揉み上げ」という作業。木の形状を美しく保ちつつ、緑の濃度が均一になるよう調整しながら葉をしごき取っていく、剪定のプロにしかできない技術の一つだ。

 時間のかかる手作業だが、福井さんは決して厭わず、切った後に枝に残った葉や木の下に散らばった枝葉を清掃するところまで、ていねいにやり遂げる。

 技術を追求する姿勢はもちろん、その誠実な仕事ぶりに信頼を寄せ、「ぜひふくふく庭に」と依頼する顧客は年々増えている。

自然石を使った石積みでも技術力を発揮

 外構工事全般を手がけるふくふく庭は、剪定だけでなく、石積みにも定評がある。とりわけ得意とするのが、自然石を用いた石積みだ。均一な形に加工したブロックとは異なり、形も大きさもさまざまな自然石を崩れないよう積み上げるには、高度な技術を要する。

 福井さんは各石にかかる荷重を考えながら、石と石との絶妙の「かみ合わせ」を見極め、緻密に積み上げていく。


「きちんと積めば、セメントで固めなくても数十年崩れることはありません。人工的なブロックフェンスと違って、時間による変化が『味』になるのが自然石の魅力。お客様のご要望に応じ、石塀や外構の階段、植木の土留めなど、さまざまな場所の石積みを手がけています」。


また採石業者と直接契約し、石積みの依頼があるたびに自ら採石場に赴いて注文に適した自然石を選び出す。相場より低価格で仕入れることでコストメリットも生み出している。

「職人集団を率い、大規模施設の管理業へも事業を拡大

 さらに数年前より新たに事業を広げつつあるのが、マンションや公共施設などの管理業だ。マンションの外構や公園などの除草や植木の剪定、消毒、肥料やりなどを請け負う。それにあたって木津川市地域で福井さんと同様の小規模造園業者を集め、「職人集団」を率いている。

 高い技術を持っていても、個人や少人数の事業者では大きな仕事を引き受けることができません。それを可能にしたいと考えついたのが、この仕組みです」と福井さん。

 造園業に関わりながら、それぞれに専門性や得意分野を持った職人たちを組織した。受注内容に応じて最適な職人を集めることで、より高い品質を提供できる。また公園などの広範囲に及ぶ除草作業でも、人数を確保することで短期間で完了できるなど、技術力に加えてスピードとコストメリットも強みになっている。

 一方、職人たちにとっても協力し合うメリットは大きい。繁忙期と閑散期の波が大きい造園業で、こうした事業に参画することが収益の安定化につながるからだ。

 「これまでも人手が足りない時には互いに手伝いに赴くなど、助け合ってきました。こうした同業者同士の“絆”を大切にしながら事業を大きくできたらと考えています」と福井さん。

 ふくふく庭の活躍が、地域の造園業の活性化にも一役買っている。