京都府商工連だより
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三景印刷株式会社

「印刷のプロ」としてお客さまに役立つ商品を提案したい

三景印刷株式会社 専務取締役小林 厚美
 天橋立のほど近く、京都府与謝野町で50年以上印刷業を営む三景印刷株式会社。インターネットでの注文、明確な価格提示、かつ低価格で全国の顧客を増やしている。アイデアあふれる新商品・サービスを次々開発する同社の取り組みについて、専務取締役の小林厚美氏に伺った。
三景印刷株式会社
〒629-2263 京都府与謝郡与謝野町字弓木1865
TEL:0772-46-0303 FAX:0772-46-4050
http://print03.jp

インターネットで1冊から受注

 三景印刷株式会社は、京都府北部の与謝野町に拠点を置きながらインターネットで全国から注文を受け、事業を成長させている。得意とするのは、100部以内の小ロット印刷。2014(平成26)年にオンデマンド印刷機を導入し、それまでのオフセット印刷主体の事業から舵を切ったことで、事業の幅が大きく広がった。

 デジタルデータを直接用紙に出力するオンデマンド方式の最大の特長は、必要な部数を1枚、1冊単位から印刷できることにある。

 「それまでは、企業や商店を営むお客さまからの領収書やパンフレット、チラシなどが受注の中心でした。1冊から印刷できるようになったことで、自費出版や台本・脚本、学習塾の教材など、数冊、数十冊単位で注文してくださる個人のお客さまにも販路が広がりました」と語るのは専務取締役の小林厚美さん。とりわけ最近注文が増えているのが、堅い背表紙で本格的な書籍に仕上がる上製本の出版物だ。オンデマンド印刷機と同時に上製本に欠かせないPUR製本機を導入。上質な紙の表紙の他、着物の布地を使った表装など特殊な製本も数冊単位で受け付ける。

独自の新商品・サービスを開発

 「お客様からの注文を言われたとおりに仕上げることも、もちろん大切です。当社はそれに加えて『印刷のプロ』ならではの新しい商品やサービスを提案していきたいと考えています」と小林さん。2017(平成29)年に同社のWEBサイト内にオープンさせた「ギフトアルバム」注文サイトもその一つだ。これは個人が持っている写真を1冊のアルバムにまとめる新サービス。専用サイト内にあるレイアウトのフォーマットに写真データをはめ込むだけで、ホームページ上で簡単にレイアウトを決められる他、さらに初心者向けとして、写真データを入れてフォーマットを選択すれば、自動でレイアウトまで行うシステムを構築した。「書籍のレイアウトや印刷についてご存じない方でも簡単にご注文いただけます」。両親への家族写真の贈り物や結婚祝い、処分に困る写真を整理し、大切に残す手立てとしても好評だ。

 その他、サービスチケット付き領収書、起業家向け領収書と名刺、社名入り封筒のセット商品など印刷会社ならではのアイデアが光るオリジナル商品を次々と打ち出している。

商工会と二人三脚で新事業開発

 そうした三景印刷の画期的な取り組みを後押しするのが、与謝野町商工会だ。経営支援員とも昵懇の間柄。「『こんなことをしたい』とアイデアが浮かぶと、まず経営支援員の方に相談します」と小林さんは全幅の信頼を寄せる。オンデマンド印刷機やPUR製本機の導入、ギフトアルバム専用注文サイトのシステムの構築の際には、商工会の紹介を受け、「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などの補助金を活用。社名の商標登録や新商品・サービスの開発にあたって専門家の派遣を受けたのも、商工会からだった。「資金だけでなく、人や知恵など必要な時に必要な支援を得たおかげで、事業や商品のアイデアを形にすることができました」と語る小林さん。商工会との固いきずなが、企業の発展に大いに役立っている。

インターネット販売でも顧客を大切にする姿勢は変わらない

 1961(昭和36)年、小林厚美さんの父親にあたる先代が印刷業を興したのが三景印刷の始まり。当初は地場産業である織物業を営む「機屋(はたや)」で扱う伝票の印刷が中心だった。活版印刷に加えてオフセット印刷機を導入してからは、パンフレットやチラシなどのカラー印刷の受注も増やし、事業を拡大してきた。

しかしやがて「ワープロやコピー機、パソコンの普及に伴って、簡単なレイアウトや印刷なら印刷会社でなくてもできるようになり、それまでの事業だけでは限界を感じるようになってきました」と、転換点を振り返った小林さん。オンデマンド化を進めたのは、そうした時代の変化に対応するためだった。

 たとえ事業形態は変わっても、顧客を大切にする企業姿勢は変わらない。

 「インターネット販売が中心になっても、お客さまが不安に感じないよう心がけています」と語るように、きめの細かい対応が同社の特長。インターネット通販では受け付けないことも多い電話での問い合わせにもていねいに応じることから顧客の信頼は厚い。

 「PDFファイルで入稿していただく仕組みですが、そもそもPDFファイルをご存じないなど初歩的なお問い合わせでも、ご理解いただけるようできるかぎり説明しています。わからないことをご相談いただくだけでなく、お客さまの注文に対し、『こうした印刷方法ならもう少しコストを下げられます』といったアドバイスをすることも少なくありません」。

「お客様の立場になって考える」視点で開発した新商品

オンデマンド化を境に「印刷のプロにしかできないこと」を意識して商品開発やサービス提案に注力し始めたという小林さん。その一つが、「サービスチケット付き領収書」だ。数冊単位で印刷できるオンデマンド印刷ならではの商品として、好評を博している。

 「領収書に『次回ドリンク1杯サービス』『5%OFF』といった切り取り式のサービスチケットをつけるというアイデア。『商店や飲食店を経営するお客さまの販促をお手伝いする方法はないか』と考えて思いつきました。領収書を渡すことが販売促進につながるだけでなく、簡易ではありますが顧客の来店状況を把握する上でも役に立ちます」。

 また「お客様の立場になって考える」という視点で生まれたもう一つの商品が、起業家向けに領収書・名刺・社名入り封筒をセットにした「起業応援パック」だ。

 「新しく店や会社を作ったら必要になる印刷物をセットにして、低価格で販売すると便利ではないかと考えたんです」と話す小林さん。顧客と真摯に向き合ってきたことが、こうしたアイデア豊かな商品に結びついている。

「ギフトアルバム」注文サイトのブラッシュアップに注力

 現在は、新たに始めたサービス「ギフトアルバム」の販売促進に力を注ぐ。

 「災害が起きた時、命からがら逃げ出したにもかかわらず、思い出の写真を自宅に取りに戻って二次被害に遭ったという話を聞いて思い立った」と開発経緯を語った小林さん。長年の間に溜まってしまった写真を整理して一冊の書籍にすれば、大切に残していける。写真だけでなく、子どもが描いた絵や賞状などを印刷し、現物の代わりに保存する人もいるという。

「新しいWEBサイトをお客さまの使いやすいよう少しずつブラッシュアップしていくのが当座の仕事」と小林さん。「これからも企業や商店のお客さまと、個人のお客さまのどちらとの接点も大切にしていきたい」と語った。