ビジネストレンド京都
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サクセスリポート  
  第13回
地域密着型小売業とは

高齢化の進んだ和束町。
少しでもお年寄りのためにできる
サービスをと考えた移動バス販売。
35年間休まず続けられた
仲辻さんのパワーの源を探る。

 和束町。京都府の最南部・相楽郡に位置し、奈良とのほぼ県境で、人口約5千5百人の小さな町である。
 和束川が流れるこの街は、お茶(宇治茶)が主産業で、京都府で生産されるお茶の約50%は和束で作られている。
町民のほぼ半数はお茶産業に係わっており、高齢化が進んでいる。
 
 そんな町の現状に対して独自のサービスを行っているのが「スーパーなかつじ」である。スーパーなかつじではバスを使った移動販売を行い、好評を得ている。
地元の若い人達は、自家用車で気軽に買いに行ける大型スーパーを利用する人が多い。しかし、交通手段が限られているお年寄りにとっては毎日の買い物は楽ではない。
 そんな事から仲辻さんは、家業がスーパーだったことから、町の人全員が毎日楽に買い物ができる移動販売を考えていた。
この商売を始めたのは昭和44年20歳の頃。
まず、始めたのは自動三輪をつかった販売である。始めた頃は、月一回の休みしかとらなかったという。
 2年ほど廻った後、夏の暑さや、冬の寒さから、大型の4・5トントラックに乗り換えることを決意。このトラックには、冷蔵庫をはじめ、流し場など調理するスペースも確保されており、8年くらい乗ったという。現在では、流し場を使わなくなったっため、バスでの販売を行っている。
 
 仲辻さんの一日は朝の4時からはじまる。まずは市場での仕入れからである。毎朝、京都中央市場や奈良まで出掛け、その日の新鮮な商品を選別する。これを35年間一度も休んだことはない。 「風邪も一回も引いたことはありません。休むというのは待ってくれているお客さんの信用を失うことになりますから。」 という仲辻さん。昼から廻り始め、夜8時までかけて約12ヶ所を毎日定刻通りに廻る。 「今ではお客さんの顔を見れば、その日に買うモノがピタリと分かります。」 毎日積み重ねてきた信頼の結果である。 バス内には冷蔵庫が完備され、食肉、鮮魚、果物なども揃い、品揃えは豊富だ。バスで販売するため、移動先10ヶ所には電気の配線がされており、エンジンを切っても問題はない。移動先の住宅地に騒音などの迷惑を掛けないようにとの配慮から販売を始めてすぐに整備した。
 
 仲辻さんは、品物を販売するだけでなく、お客さんのその日の晩ご飯のメニュー、レシピ相談なども受けることが多く、町の便利屋さん的な存在だ。
 料理全般に関しては奥さんの担当で、夜中に夫婦二人でレシピのアイデアを話し合う事も多い。手作りのパンやケーキ、クッキーなどは、お客さんの誕生日に合わせて焼くなどのサービスも行っている。
 
 スーパーなかつじは仲辻さんと、奥さんの他3名の従業員がいる。現在お得意先は約170件。
「お年寄りが多いので、年々お客さんが減って来て寂しいこともあります。」
 自身、お孫さんが6人いるが、まったくその年齢を感じさせない。移動用のバスの他にマイクロバスをもう一台所有している仲辻さんは、
「今後はお客さんを送迎して買いに来てもらうということも考ています。」
とお年寄りに益々うれしいサービスも考えている。

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