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サクセスリポート  

■株式会社テラシマ精機
〒629-2313 京都府与謝野郡与謝野町字三河内800番地の6
TEL.0772-43-0737 FAX.0772-43-0732

 京都府最北端に近い、のどかな風景が広がる与謝野町に、産業機器や精密機器の組立を主に行っているテラシマ精機がある。代表の寺島氏は、町と同じく穏やかな人柄を感じさせたが、その笑顔の奥には、常に会社の存続を考える強い思いが隠されていた。一人で始め、今では2つの工場、56名の従業員を持つまでに成功したその秘訣を探った。
 
 
 『若い頃から独立を目指していた』と、テラシマ精機を一代で築きあげた代表の寺島氏は話す。30歳になったら独立しようとその道を模索し、業界新聞の記者など様々な業種を経験。資金は無かったが、それまでに培った経験を活かし、知り合いからミシンの部品加工の仕事を得、念願の独立を果たした。
 
 独立した当時はちょうど動力ミシンが普及しはじめた頃で、寺島氏は実家の六畳一間を工場として借り、部品加工の作業から、製品の受け渡しまで1人でこなしていた。転機が訪れたのは、8年が経過した時である。大手企業の工場が近くの峰山につくられ、取引について説明会が行われるという記事が新聞に掲載されていた。安定した仕事が受注できるかもしれない大手との仕事は魅力だった。寺島氏は説明会を待たず、すぐに問い合わせに向かい、その足でそのまま面会にまでこぎつけた。
「説明会には800社の人が集まったと聞いていますが、別に呼ぶと約束していたので私は行っていません。」
この時点ですでに一歩リードしていた。そして他社が『大手は厳しい。こんな価格では無理だ。』と言う中、小型精密モーターの加工・組立を受注した。
「皆、無理だと言っていたが、その価格はうちがそれまで行っていたミシン部品の加工に比べればずっと良かった。小型精密モーターの加工にはミシン部品の加工技術がそのまま活かせ、単価もいい。他には厳しい仕事でも、うちにはいい仕事だった。」
こうして同社は急成長を遂げる。
 

 新たに手掛けた小型精密モーターは、ハードディスクなど、様々な用途に使われ、工場はフル稼働した。そんな忙しさの中、寺島氏は他にも色々な製品を手掛け始める。その行動の真意を問うと、
「製品は10年経つと、コストの安い海外に製造拠点が移ってしまうんです。今、忙しいからと一つの仕事だけに頼ることはできない。常に多くの仕事を手掛けてました」
そう話す通り、大きな転機となった小型精密モーターの製造拠点も現在は、海外に移っている。そして今、液晶バックライトという新たな時代の波を逃すことなくしっかりと掴んでいる。

 
 見事な危機管理で順調に業績を伸ばしてきた同社の次なる目標は、自社製品の開発であった。
「これまで海外に生産拠点が移るという苦い体験を何度もしてきました。そこで、考えたのが我々にしかできない付加価値のある商品づくりです。」
そこで活用したのが、経営革新支援法である。開発費の3分の1を自社で負担し、残りの3分の2を国と府が負担する。
「大手が作らない、けれど確実にニーズのある製品を作ろうと思いました。」
寺島氏は、知人のお寺でお年寄りの両親が残され息子が帰らないと、幕の取替えも危険が伴いできない事を知り、安全に取り替えられる装置の開発を決めた。しかし、経営革新支援法の承認を得るには、綿密なスケジュールなど厳しい面もあったのだが、
「追い立てられたのが反対に良かった。自分たちだけでは、開発期間が延びていたかもしれない。」 と話す。そして完成したのが自動幕昇降装置である。特許も取得したこの装置の可能性は、これからまだまだ広がりそうだ。
 
 『中小企業に見通しなんてたたない』そう言い切る寺島氏はまた『だから、海外に負けない我々でしかできない完成品をつくることが必要』だと言う。しかし、それは1社でするにはリスクが高く簡単にはできない。そこで地域が一つになり、各社それぞれの得意分野を活かした完成品をつくることはできないかと話し合いを重ねている。
「5年後には引退してゆっくりしたいもんです。けれど、あと5年もう一仕事やりたいですね。」と最後の仕事に向けた熱い思いを語ってくれた。

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