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サクセスリポート  

■魚菜料理店「縄屋」
〒627−0142 京都府京丹後市弥栄町黒部2517
TEL(0772)65-2127 FAX(0772)65−4441


 版築土塀に囲まれた魚菜料理店「縄屋」は、内装、テーブル、イス、天井、また扉の取っ手や室内履きと、細部にまで素材や質感にオーナーであり料理人でもある吉岡氏のこだわりが貫かれている。調理場から現われた吉岡氏は、頑固な料理人というよりは、まだ若々しさの残る青年のような面立ちが印象的。静かな口調ではあるが、店づくりへの強い“こだわり”を話してくれた。
 
 
 元々、弥栄の町で仕出し料理屋を営んでいた家で育った吉岡氏は、子供の頃から、将来は料理人として生きることを決意。京都市内にある有名料理店へ修行にでた。そして、当初から、「いつかは地元の新鮮な素材を使い、自分の目の届く範囲で料理をだしたい」と独立を心に決め、給料の大半は将来、自分の店で使う器集めに費やし、休みの日には、他店への視察を重ね、味や店の雰囲気を研究した。また一見、料理とは関係がないように思われる美術館などにもよく足を運んだという。どのような空間で絵を見せているのかを研究し、料理の見せ方や居心地の良い空間づくりに反映できないか、常に「自分の店には何が必要か」を考え続けた。
 
 そうして8年の修行を経て、弥栄町に戻ったと同時に、地元でのオープンに向けて動きだした。
 描いてきた店の実現のため、まずは店舗の設計に着手し、自ら建築について勉強もした。店を彩る梁やテーブル、イスは材質を直接見て確かめるため、出かける手間を惜しまなかった。しかし、強いこだわりがあればあるほど、費用も半端では済まない。そんな時、助けになったのが商工会だった。「地元に戻ると同時に商工会の青年部に誘われ入会しました。店づくりには色々と相談に乗ってもらい、エキスパートバンクを使わせてもらったり、職人さんや地元の会社の紹介もしてもらいました。」
 そうして、地元で採れる土塀の原材料のまさ土や、建具などの仕入れ面でも協力を受けた。また、天井の塗装や庭づくりなど、自分でできることは自分で作業し、経費削減に尽力。こだわりは貫いた。
 

 妥協することなく店づくりを遂行し、構想期間14年にも及んだ「縄屋」は2006年の6月遂にオープンが実現した。開店に際して、人口の多い京都市内に比べて不安はなかったのかをたずねると、「きちんとした料理のお店が近くにないため、京都市内まで出かけているという方が多くおられました。また、京都市内だと、その日獲れたモノでもお店に出せるのは夕方以降になりますし、色も変わってきます。弥栄町なら、新鮮なモノをお昼からでも提供できます。
 素材を活かしながら様々な食し方があることを提案し、『おいしい』と言ってもらえることに喜びを感じます。」と話してくれた。

 
 食材から建築素材に至るまで地元にこだわり、シンプルで落ち着ける空間が魅力のお店は、数誌から取材を申し込まれるなど、メディアから注目を浴びている。
 「たまたま、ある女優さんの着物の撮影があり、お弁当を提供したところ、大変気にいっていただきまして。そのご縁から、取材の依頼を受けました。」
 吉岡氏が食事の空間にこれほどこだわり抜いたのには理由がある。
 「昔、お酒を飲んでいた時に、修行先の先輩に『これで飲んでみないか』と、とっくりを渡されて。中身は同じでも器が変わるだけで、楽しみ方がこんなにも変わるのかと驚きました。」
 かの魯山人も食事は、味だけでなく、香り、食感、情報、そして目で味わうのものだと言っている。お店を訪れた時から、五感すべてで食を愉しめる魚菜料理「縄屋」はこれからも地元を中心に人気を呼ぶに違いない。

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