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■川田鉄工株式会社
〒622-0213 京都府船井郡京丹波町須知本町40
TEL.0771-82-0003 FAX.0771-82-0250
http://www.touchdex.com

 京都縦貫自動車道を丹波ICで降りると、なだらかな山並みを背景に川田鉄工株式会社の工場は建つ。チャックという工業製品の製造販売を手掛ける同社は、現代表の就任以降、自社製品の開発、新たな取引先の開拓と目覚しい発展を遂げる。今回は、その飛躍の仕掛け人となった代表・川田泰幸氏に製品開発の発想の原点と成功への道程を伺った。
※チャック:主に工場にて、旋盤の工具や加工物を締め付けて固定させる装置。
 
 
 大手精機工場で機械設計士として勤めていた川田氏が実家の同社を継いだのは約30年前のこと。情報や流通の面で都心部に比べ引けをとることに危機感を感じていた同氏は、会社に戻ると同時にチャックの開発に取り組む。チャックとは、加工物を掴んで固定させ、上または横からの研削の補助を担うパーツである。「都心部から離れたこの町で他社と同じものを作っていてはやっていけない。そこで競合しない製品を作ろうと考え、現行の製品では掴めない物を掴むチャックの開発を進めました。」加工物の硬度は様々で、掴んだ時に製品を傷つけない精巧な技術が求められる。同氏はそれまでの機械設計士の技術を活かし、様々な用途に合わせたチャックを次々と開発した。
 
 順調に開発を進めていた同氏だったが、ある時、工場での研削加工において工作機器に合う補助パーツを探したところ既製品ではサイズが合わないことがわかった。当時の工作機器は上または横からの一方向からの研削作業に限られ、加工物の面や角度を変える補助パーツが必要だった。パーツには回転を加える動力モーターが付けられ、大型の物しかなかった。「必要に迫られてたんです。どうすればいいか、じっと機械を見つめて考えました。で、ふと気づいたんです。工作機械に鉄を削る強力な動力があることに。この力を利用すれば、モーターがいらず小型化が可能になる。」この今ある力を利用し余計な物を引く製品開発を川田氏は”マイナスの発想“と呼ぶ。そして誕生したのが、モーターを外すことで小型化、コスト削減に成功した自社製品『タッチデックス』だ。
 

 自社用に開発した『タッチデックス』の次なる道は製品化だった。ここに意外な落とし穴があったと川田氏は話す。「自分で使うには何の苦労もなかったのですが、売ることを視野にいれると、使い勝手や取り付け易さという改良が必要なことに気づきました。また工業製品とはいえ、きれいな製品を買いたいと思うのは人の心理だと思うんです。」専門技術や知識が必要になる製品は導入への大きなハードルとなりかねない。同氏はそれに気づき改良を重ねた。そして塗装を施し、見た目の美しさを大切にした「メーカー製品」が誕生した。

 
 製品化へと辿りついた『タッチデックス』だったが、更なる難題が待っていた。「今までなかった製品なので、商社の担当者から製品を広めてもらうこともできず、耐久性にメーカーの担当者でさえ、理解してもらうまでに時間がかかりました。」製品認知、理解という高いハードル。このままでは一向に納入先が見つからない。そこで毎月DMを一万通以上発送するという手法をとった。「まずは、タッチデックスという製品を知ってもらい、反応があればどこにでも説明に伺いました。」地道な営業活動が実り、今では大手メーカーを始め世界30ヶ国に納入している。動力を必要としない事で、メーカーや国という制約を受けないメリットも導入に拍車をかけた。その精度の高さや操作性の評価は高く、多くの企業がリピーターとなっているという。
 
 「楽をしたいから、競合したくないんです。」「他に寄生する製品を開発しているんです。」と川田氏からは思わず驚く発言が飛び出すが、もちろん言葉の意味そのままではない。常に将来を見据え、会社をいかに安定させるかを考えているのだ。自社独自の製品を開発することで、中小企業が強いられがちな価格競争による体力消耗を防いだ。
 今後について伺うと、「近年は、5面、10面加工が可能な工作機械が開発されています。しかし、新たに導入するには莫大な資金が必要です。弊社の『タッチデックス』は後付けが可能なので、少ない資金でも、最先端の工場と同じ技術が導入できます。1つ付ければ5面、2つで10面と加工能力をあげることができます。今後は『タッチデックス』の認知度をより高める活動を考えています。」
 同社の可能性はまだまだ広がりを見せそうだ。
 川田氏が何度も口にした”マイナスの発想“。設備投資には「大きな資金が必要」という概念を変えるヒントがあり、規模や地方差は関係ないという勇気を与えてくれた。

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