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サクセスリポート  

■共立グラビア株式会社
〒629-0301 京都府南丹市日吉町保野田開野17-1
TEL.0771-72-0263 FAX.0771-72-0245

 印刷物とは思えない、自然な木目や大理石の模様ー。共立グラビア株式会社は、「グラビア印刷※」という特殊な印刷技法を用い、建材に表情をもたらす“化粧紙”の製造を手がけている。大手企業の独占市場で、中小企業が生き残るのは難しいとされる建材専門のグラビア印刷業界において、常に革新的な事業を展開。注目され続ける成功の秘訣を同社代表取締役、今井 武氏に伺った。
※写真画像の印刷に適した印刷方式の一つ。ビニール製の包材や車のシート、 建材の化粧紙等、特殊な材質を印刷するのに利用される。
 
 
 共立グラビアの創業は1972年。それまで今井氏は建材用の化粧紙を専門とする印刷会社の工場長として指揮を執っていた。かねてより「印刷会社を興したい」との夢を抱いていた同氏に、42歳のころ、チャンスが訪れる。
 「勤めていた企業から『樹脂加工会社を開いてみないか』との依頼があったんです。グラビア印刷では、化粧紙を本物の木や石の質感に近づけるために、最終工程で化粧紙を樹脂でコーティングする必要がある。でも勤務先には加工施設がなく、自社での製造体制を整えるための開業依頼でした」。
 これまでの20年間業界に身を置き、得てきた技術と経験を生かしたい―。その想いから、まずは樹脂加工業から始めることを決意。将来は印刷から加工まで、一貫して手がける印刷会社を目指し、故郷の京都府日吉町(当時)で同社の前身となる工場を立ち上げた。
 
 独立後、精力的に事業を進める同社だったが、思わぬハプニングに襲われる。”第一次オイルショック“―。1973年、全世界を震撼させたこの事件は、樹脂加工業にも大打撃を与えた。それまでは高度経済成長期の時流に乗り、好調だった同社の経営は急変。加工に必要な樹脂が入手できなくなり、事業は完全に滞った。再開のメドも立たず、倒産の危機を迎えるかに見えたが、「せっかく掴んだ夢を、ここで諦めるわけにはいかない!」。
 将来にかける思いが同氏を奮い立たせた。以来、全国各地の樹脂取扱業者や店々を探し歩いたが、一向に樹脂は見つからない。しかし、行く先々で心当たりを教えてくれる人々がいて、大きな支えになったという。わずかな情報を足でたぐり寄せること、数カ月。ついに、確保先を見つけ出し、待望の樹脂を入手!これを機に、以降5年間、国内のグラビア印刷会社の加工を一手に請け負うという快挙を成すことに。成功で得た収益をもとに工場の設備を増強し、念願の印刷会社へと躍進した。
 
 新たなスタートを切った同社を待ち受けていたのは、大手企業との熾烈な顧客争奪戦だった。技術力には絶対的な自信があったが、大手に比べて新規参入の中小企業は、その認知度や販売ネットワークが劣るため、クラインアントから指名を得るには困難を極めた。業績が伸び悩むなか、打開策を模索し続ける同氏だったが、あるとき逆転の糸口を見出す。それは、「化粧紙が在庫になって困る…」という内装業者の悩みのタネだった。
 「確かに、競合社すべてが、化粧紙は1ロット5000m以上、つまり ”大量印刷“でないと請け負ってくれないのが実情でした。地域の中小業者にとっては”少量“で間に合うのに、大量の製品が納品されるわけですから”在庫“になることは必至。ならば、中小業者たちの”少量“というニーズに応えることが、大手には真似できない、勝利のカギだと考えました」。
 そこで同氏は”1000mという短いロットでの納品“を決意。木目柄では、杉や檜、南洋材のように化粧紙の模様を豊富に取り揃えることにした。この業界初の”多品種少量生産“は、内装業者や木工業者等から「余剰分を仕入れなくて済む」「浮いたコストとスペースで他の製品が買える」と、支持を獲得。取引先は全国へと広がっていった。
 
 この成功で、確かな手応えを感じた同氏は、従来の営業方法にもメスを入れた。徐々に売り上げは上向くものの、製品を広めるマンパワー不足に悩んだ。そこで営業マンの代わりに化粧紙の見本カタログを全国各地の内装代理店に置くことにしたが、この販売手法は既に多くの企業が取り入れていた。
 そこで、大手に対抗する更なる取り組みを考えた結果、「カタログを見て化粧紙を注文した個々の業者のもとに出向き、建材への美しい貼り方などをアドバイスする」という納品後のアフターサービスを開始。”顔を合わせる機会が少ないカタログ販売“に”直接的なコミュニケーション“を取り入れることで、デメリットをメリットに転じたのだ。同サービスは、「製品の仕上がりが格段に良くなった」「効率の良い作業法を発見できた」と、顧客の評判も上々。評判は口コミで広がったという。
 
 バブル崩壊後、同社の得意分野にも大手企業が参入し、中小企業にますます厳しい状態が続いている。この局面を打破すべく、現在同社が注力しているのが「自社製品の開発」だ。「ユーザーの皆さんと対話することから始めています」と、同氏が話すように開発の根底には「ユーザーの要望に応えたい」という真摯さが伺える。そんな姿勢のもとで生まれた製品が、昨年、大手製薬会社と共同開発した特殊な化粧紙「ムシブロック」だ。「虫を殺さず、寄せ付けない」この化粧紙は、衛生管理が重視される病院などで好評を呼び、現在、同社の売り上げの2割を占めている。
 同氏が”大手にないものを模索し続け“手にした成功の影には、常に時代の大きな流れの中でかき消されていた小さなニーズを拾い集める、地道な努力が続けられていたように思う。求める人々の声に応えることで、自社そのものも成長する。取材を通して”共立“=”共に立ち、栄える“という社名に込められた信念が伺えた。

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