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サクセスリポート  

■有限会社 クリーンショップ京屋
〒619-1152 京都府木津川市加茂町里東鳥口22-7
TEL&FAX.0774-76-2156 FAX.0774-76-6868
 加茂町を中心に、京都府南部の相楽郡一円に9つの洋服クリーニング店を展開するクリーンショップ京屋。スーパーへの出店を機に、独自のサービスを続々と生み出し、顧客のリピーター化に成功。急成長を遂げた。不況が続くクリーニング業界で、年商1億を越える企業になぜ成り得たのか。その秘策を代表取締役・上西英仁氏に伺った。
 
 
 上西英仁氏が、家業のクリーニング店を継いだのは、今から16年前。若干24歳、好景気のなか更なる自社の発展に希望を膨らましてのスタートだった。しかし翌年、バブルが崩壊。クリーニングはいち早く消費者生活の節約の対象になり、創業以来、誠実で丁寧な仕事で地元の強い信頼を築いてきた同社も、これまでにない業績悪化に見舞われてしまう。現状打開の具体的な解決策が見出せないまま、浮上の糸口を求めて営業、他社の見学に奔走した。
 「本当に苦しい時期でしたが、そのとき外の世界を知った事が、かけがえの無い財産になりました。今の成長があるのはそのときに築いた人脈と知識の賜物」と語るように、業務を円滑に行うための社内体制の見直しやサービスのあり方を学び、同業、他業種に関わらず幅広いネットワークを築いた。そして8年後、それまでの努力が結実するチャンスが到来!かねてより事業の相談事などを通じて、交流のあった商工会から、地元で新規開店する大型スーパーが、テナントを募集するという情報を入手。「地域の消費者が集中するスーパーへの出店。このチャンスを逃すわけにはいかない!」早速、選考に応募すると、同氏が奮闘する姿を見ていた商工会のバックアップもあり、多数の応募が殺到するなか選ばれる快挙を達成。逆境のなかでもめげない行動力で掴んだ勝利の切符だった。
 
 念願のスーパー出店を果たした同社だが、開店以来の悩みがあった。スーパーでの受注は予想を上回るものの、昔ながらの手作業を重視した工程では、作業が追いつかなくなりつつあったのだ。しかも大手企業が地方の市場に参入し、納品スピードをウリに徐々に勢力を拡大していて、「このままでは、約束の期日に商品をお渡しできなくなるばかりか、大手に顧客を奪われてしまう!」工場に溜まりゆく洗濯物を目にし、強い危機感を感じた同氏は、作業速度を上げるため、かつて見学で訪れた工場で目にした、クリーニングの自動処理プログラムの導入を決断。一点一点洗濯するものにあわせ、手作業で洗剤や洗い方を変えていた従来とは違い、予め繊維の材質や汚れに応じた洗濯を、ボタン操作一つで対応できるようにした。さらに他社に一歩抜きん出るため、それまでの経験や勘を生かし、落ちない汚れを落とし、洗濯後の衣類の皺を減少させる独自の洗剤配合や洗濯プログラムの開発にも着手。「3年で今の2倍の処理を実現」という目標を課し、取り組みを始めた。が、その矢先、社内からの反発という思わぬハードルに直面する――。
 「もともと着物の洗い張りという、職人業から始めた弊社では、効率化によるスピードアップは”手抜き“という意識が強かった。また当時の業界では、洗濯物が沢山あること=仕事が沢山あると考え、それを一種のステイタスのように感じていた」という。改革は社員個々の意識を変えることこそ重要と気付いた同氏は、一人ひとりに機械での洗い上がりが手作業に遜色ないことを証明した。また洗剤の開発においては、衣類の皺が減りプレスがけの時間が短縮したことなど、取り組みの過程で現れた成果をその場で見せ、些細な変化も共有した。やがて社員の意識の変化に伴い、機械の作業と人の作業が連携し作業効率は予想以上に向上し、洗濯物はみるみる減少。一日の処理は700着が限界だったクリーニングが1500着まで伸び、予定を上回る2年で目標を達成した。さらに作業がスムーズに流れることで、クリーニングの”当日仕上げ“が可能に!このサービスは、顧客が望むときに商品を引き渡しできると大好評を獲得。同氏は「バブル崩壊以降、人々の価値観の変化や多様化する生活リズム……。支持を得るためには、”早くて便利“や ”得“と思わせる付加価値が必要ということがわかった」という。社員一同に芽生えた消費者目線の”気付き“は以降同社が繰り出すサービスの源泉となった。
 
 同社が次の目標にしたのが”顧客のリピーター化“だ。二度、三度と来店してもらうためには”便利“や”得“といった価値の提供こそ成功のキー! と学び、早速サービスの開発に着手。頭を悩ませたものの、ヒントは身近なところにあった。
 「スーパーには毎日、または定期的に同じお客さんが来る。その魅力は、便利なのはもちろん、特売やクーポン券の発行など毎日何かサービスをしていることでした」
 無料チケットやシミ抜き、防臭などのサービスをセットで提供するなど、今なら一般的だが、どこよりも早くサービスを開始し他店を圧倒。アイデアが受け、多くのリピーター層を獲得した。やがて評判は地域一円に広がり、現在は全9店舗、年内にも新たに1店舗をオープンさせる予定だ。
 
 同社は新たな活路として、同業他社の業務用洗濯物を引き受ける事業にも進出した。きっかけは、昨年末のこと。かつての同社と同じ悩みを抱える業者から、業務の改善策を模索するための一通のアンケートが届いた。同氏は他人事とは思えず、その質問に親身に答え、成功した秘訣を明かしたところ、そこから取引が生まれたという。この同氏の何事にも真摯に、積極的に取り組み業種を越えた視点で顧客サービスを考え取り入れる姿勢こそが、同社を成功へと導いた源である。これこそがこれからの企業のみならず、企業を支える一人ひとりの人間の成長に必要なものと教えられた。

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