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サクセスリポート  

株式会社アライの森
〒619-0214 京都府木津川市木津奈良道73番地
TEL 0774-72-1444  FAX 0774-72-3912
 いま、企業間における古紙リサイクルの流れが、古紙価格の暴落と大量の古紙余剰で深刻な事態に陥っている。古紙卸売業を営む株式会社アライの森は、この変動する古紙需給のバランスを安定させることに貢献する画期的なシステムを生み出した。
 
 
 資源が乏しい日本において、古紙は江戸時代から既に再利用されてきた。国内で生産されている紙の原料は、古紙が約60%を占めており、リサイクル率は世界トップクラスだ。家庭や企業から回収された新聞紙や雑誌などの古紙は、卸売業者を経て、製紙工場に集められ、再生紙として生まれ変わるのだが、従来このリサイクルに必要な古紙を回収し、需給バランスを調整してきたのは民間の古紙回収業者であった。
 しかし、このシステムに自治体が参入したことで状況は大きく変化した。きっかけは、近年の紙生産増大による古紙の大量発生。民間の古紙回収システムでは吸収・調整できなくなってしまい、自治体がごみ減量に乗り出したというわけだ。税金を使ったコストの安い古紙を納入できることになったことで、製紙メーカーは、古紙の買取価格を下げ始め、民間の古紙卸売業者に、深刻なダメージを与えた。そして、そんな情況に追いうちをかける問題が業界を襲った。
 平成12年にリサイクル法案が可決。ごみ処理が有料化されたことで、これまでごみとして出されていた大量の古紙が、古紙回収に出されるようになったのだ。古紙は、製紙工場が必要とする量をはるかに超えてしまい、卸売業者には引き取り手のない古紙が在庫として大量に余ってしまった。業界は活路を海外の輸出に見出すも、輸出コストが買い取り価格を下回るという厳しい状況であった。
 そして、問題は地域の住民の間にも広がっていた。自治体、民間の業者ともに回収作業を休止させたことで、古紙の不法投棄などの問題が起きたのだった。
 古紙のやり場に困る……地域住民の悲痛な声を聞いた同氏は、リサイクル業界に携わる企業として、地域のために役に立てることはないかと、一時的な古紙置き場として会社の前にコンテナを設置。すると、当初の予想を大きく上回る古紙が持ち込まれた。当時、古紙回収は業者が出向かないと集められないというのが業界の常識だった。しかし、回収スペースを設ければ、古紙が集まるということ がこの出来事を通して判明。同社は、多くの人々が利用できるよう、交通量の多い車道沿いに古紙回収スペースを設置した。その名も「古紙ドライブスルーユーカリ」。平成13年、同設備が、奈良市の佐保台に誕生した。回収業者を待たなくても、無償で自由に古紙を持ち込めることで、回収してもらえない古紙に悩んでいた地域住民にとってなくてはならない存在となった。

 
 慢性的な古紙余剰と、製紙メーカーによる古紙価格の引き下げが続く情況を、一気に好転させる出来事が起こった。中国の爆発的な経済成長が始まり、輸出古紙の需要が一気に高まったのだ。
 古紙の買取価格が高騰した中国に、古紙卸売業者はこぞって輸出し、それまで行き場を失っていた古紙は逆に足りなくなるほどになってしまった。結果、逆に国内の製紙メーカーに充分な量の古紙を供給できなくなってしまったが、そんな中で、同社はできるだけ国内の製紙メーカーにも古紙を納めるようにした。ここ数年の古紙の余剰と不足は、国際情勢や景気により繰り返され、それを目の当たりにしてきた新井氏は、海外輸出はあくまで国内の古紙の供給量を調節する目的だと考えていたからである。また、国内の製紙メーカーに安定した古紙量を常に循環させるには、景気などに左右されない古紙の供給システムが必要であり、それを可能にしたのが「古紙ドライブスルーユーカリ」だった。
 「目先の利益追求に走るのではなく、国内の企業とのつながりを先ず大切にしたかった。国内の製紙メーカーとの協力で、古紙需給のバランスを安定させるしくみを作ることで、かつての日本の完全なリサイクルシステムに少しでも近づけると考えています」。

 
 古紙回収の画期的なしくみを生み出したことと、国内の製紙メーカーを優先させた取り組みが業界から注目されたことで、商工会関係者から経営革新計画の申請を勧められ、見事取得した。同計画は、対象企業が作成した事業計画を都道府県が承認した場合、金融機関からの優遇措置や、行政からの補助金を受けることができる。
 「古紙ドライブスルーユーカリ」は、現在、京都・奈良・三重に11ヶ所設置されている。地域住民が自発的にリサイクルに参加できるようになったことで、リサイクルに携わる企業として社会的役割を実現させた功績も大きい。「大変厳しい時期にあることは確かですが、誠意を持って乗り越えていきたいです。これから先、資源の循環がうまくできるように努力したい」そんな新井氏の言葉から、不況の中であっても未来に光があることを信じ、新しい取り組みに挑戦し、進んでいくという力強さを感じた。

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