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サクセスリポート  

京都EIC株式会社
〒613-0034 京都府久世郡久御山町佐山西ノ口1-4
TEL. 0774-41-5150  FAX. 0774-46-3553
 ITバブル崩壊の苦境を乗り越え、ガラス製造プラント向けの総合監視制御システム「Glass-Brain」をリニューアルし、一大ヒットを記録した京都EIC株式会社。
 成功の裏側には、「共存共栄」の企業理念で雇用と技術力を守り抜いた企業体制の構造改革があった。
 
 
 あらゆるものづくりが継承されてきた久御山町で、工場用の“自動制御装置”の設計・製作から施工、工事後のアフターサービスまで一貫して行う京都EIC株式会社。自動制御装置とは、工業製品の製造ラインをソフトウェアで管理・制御し、製品を造りあげるまでの一連の工程をオートメーション化させ、効率化、省エネ化などを実現するという、ものづくりにおける“司令塔”とも言えるシステムのことだ。
 同社では流体の自動制御装置を主力とし、なかでも複雑なガラス製造工程を一元管理できる画期的なガラスプラントの自動制御装置は国内で6割を占め、業界トップを独走する。従業員数数十名という決して大規模でない企業の製品がこれ程までに支持された理由は独自の技術力に尽きる。しかし、誕生までの過程は単純なものではなかった。
 通常、ガラスの製造工程は、大きく分類すると、1.原材料の粉砕・造粒と、2.溶解といった2つの工程からなる。かつてはそれぞれに自動制御装置を設置し、それを個別に管理・制御することで一連の製造過程を成り立たせていた。さらに、非常に綿密な圧力・体積・温度調整が必要となるため、プラントの性能に合わせるためにすべての装置をオーダーメイドで製造しなくてはならなかった。
 『初期投資の大きな壁』『工程管理の複雑さによる現場への負担』その煩わしさをなんとかしたい!そんな多くの顧客の切なる願いを聞いた同氏は、どのようなプラントにも対応し、製造に関わるすべての情報を一括で管理できる自動制御装置の開発に踏み切った。
 そして誕生したのが「Glass-Brain」=ガラスの頭脳である。
15年前に初回版が誕生して以来、同システムは評判を呼び、幾度の再開発を重ねて2004年、ガラス製造に必要な全工程を一元管理し、“初期投資”と“工程管理の複雑さ”をクリアした理想の形へと完成を遂げた。

 
 しかし、「Glass-Brain」の最新版が開発された2004年とはまさにITバブル崩壊直後という非常に厳しい時代だった。この情勢下で、同社は手綱を緩めること無く開発を進め、他を凌駕する製品を生み出した。そこにはどのような企業努力があったのだろうか。
 時代はさらに逆上った1994年。バブル崩壊後、日本は平成不況に突入し、多くの企業は人員削減を迫られていた。同社も例外ではなかったものの、苦境だからと言って長年の技術と経験の塊であるマンパワーを失うわけにはいかない。打開策を模索していた。それだけではない、こういった情勢下では、他の企業は新たな開発をストップさせており、世の中の企業活動は著しく停滞する。しかし、逆に言えばここで技術力を切り捨てることなく、企業の独自性を磨くことができれば、他社に圧倒的な差をつけ躍進できるに違いなかった。
 同氏はその仕組みづくり熟考し、たどりついたのが、これまで事業をともに進めていた協力会社と、より強靭なパートナーシップを作ることだった。これまで同社では、おもにシステム開発を自社で行い、現場への施工やメンテナンスに関しては、協力会社に依頼していた。その協力会社に株主になってもらったのだ。
 協力会社が株主になるということは、いわゆる下請けではなくなることを意味する。対等な立場で意見を交換し、より緊張感を持って仕事ができるということだ。そしてなにより同氏が目指したのは、状況が苦しいときにでも、互いに補完しあえる仕組みをつくり、永続的に“良質”な企業体質を作り上げることだった。
 「ヒントにしたのは、共存共栄という言葉です。技術者たちはモノが不必要になったときに切られる。バブル崩壊の中で、多くの技術者たちが解雇されましたが、一時的なしのぎにはなっても長い目で見たときに、将来確実に企業、しいては業界全体の弱体化を招く」
 株主であれば、苦しいときにも会社の状況が分かるから、一緒に耐えてくれる。そして上向きのときは喜びを共有する。株主になることを機に、協力会社には同じ敷地内に移転してもらった。立場だけではなく、距離的にも密接になるということは、これまでにないスピードの事業展開が可能になったのである。

 
 4代目が挑んだ改革により、インターネットの利点を最大限に活かして新たな販路を手にした同社であるが、企業を維持するためにはこれからも常に時代のニーズに合った事業転換が求められる。その実現にリスクはつきものであると考えた同氏は、商工会より紹介された「知恵の経営報告書」の作成を決意した。客観的な意見を取り入れることで、新たなニーズを探し、固有の技術やノウハウである「知恵」を掘り下げ、次なるステージに備えようというのだ。
 「現在、作成中ですが『企業理念が甘い』と厳しい指摘を受けました。これからも変革のために幾度となく大きな選択を迫られるでしょうが、その時に自社の『芯』となる企業理念を持つことが重要で、それを今模索中です」


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