前段の現場改善で得られた余剰人員とスペースを活用し生まれたビジネスがある。これこそ展示会で注目を集めた樹脂製品である。
同社のブースには、素材の質感や形を手に取って確かめる人々が群がり、その中でもひと際、ハバネロという唐辛子を樹脂で作成した食材サンプルが注目を集めた。素材の特性上、見た目の色や質感、硬さまで実物に近いレベルで再現したという。場合によっては匂いまで付けることも可能で、収穫時期に関係なく生産者がお客さんに提示できる食材サンプルとして、今後の発展が期待できる商品だという。
これまで、エンドユーザー向けの製品を販売する機会が少なかった岩本氏にとって、お客さんの反応がすぐ返ってくるのは新鮮だったという。「笑顔が直に見られる仕事を今度はしていきたい」と熱っぽく語る。
また、現在商品化に向けて試作を進めているのが、オリジナルの樹脂ノベルティや釣りルアーの制作キットだ。形を自由に形成できる性質を活かして、誰もが簡単に小ロットで手に入れられる仕組みを考えている最中だという。「モノが氾濫する現代において、自分だけの一点ものを求める人々のニーズに応えられれば―」と語る氏の目は、すでに同社の「次の変化」を見据えていた。