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サクセスリポート  

■有限会社 京秋桜
〒619-1103 京都府木津川市加茂町岡崎山後11
TEL.0774-76-0877 http://www.kyo-cosmos.jp
 平成21年度村おこし特産品コンテストで中小企業庁長官賞を受賞した「柿しぶ染め ふきん」。柿しぶの効果に目をつけ、人にやさしい天然素材製品を生みだした有限会社 京秋桜(キョウコスモス)成功までの道のりに迫る。
 
 
 有限会社 京秋桜は津山氏が長年経営している織物の襖紙等を扱う会社の子会社として発足した。地元の特産品であった「柿しぶ」の性質に目をつけた津山氏はその商品化に成功。「柿しぶ染めふきん」という看板商品を生み出し、京秋桜での取り扱いを始めた。「柿しぶ」に注目するきっかけとなったのが、津山氏が元々経営していた会社に届いた厚生労働省からの一通の通達である。それは「シックハウス対策の商品開発を進めるように」という内容であった。他社では、貝殻を繊維に練り込んだ襖紙等の商品開発をすすめていた。津山氏も開発を手掛けるべく、付き合いのあった紡績会社の元に相談に出向く。そこで話にあがったのが地元・山城地方の特産品であった「柿しぶ」であった。「この辺りでは、昔は畳の下に柿渋の液をひたした新聞紙をひいて防虫していた。調べてみると、柿渋の成分には、徐々に菌を減らしていく抗菌作用があり、それに伴って消臭効果もあった。さらには、シックハウス対策としてホルムアルデヒドを吸収し無害化する消臭作用もある事がわかった。」早速、製品化に向けて紡績会社の協力を得て実験を始めた。津山氏が目指したのは、繊維一本一本を染め上げる"先染め"という方法であった。それは後に染める方法よりも、柿しぶの効果を強力に発揮させる事ができた。しかし、これが難しい事はすぐにわかった。柿しぶの成分が綿の繊維一本一本を接着させ硬くなり、また染めムラができてしまうのだ。だが、効果が薄れてしまう後染めにする気は津山氏には毛頭なかった。そして、実験を繰り返し3年の時を経て、ようやく柿しぶの先染めに成功。その糸で製造した織物襖紙を検査機関で試験したところ、間違いなくシックハウス対策に高い効果を示すことがわかった。

 
 長い時間をかけて、ようやく辿りついた柿しぶ染め≠フ織物襖紙の製品化であったが、それを卸していた業者は積極的に取り扱ってくれなかった。当時の襖紙業界は保守的で、新しい物をすぐには理解してくれなかった。もちろん家を建てたり、実際に襖紙を使う人にしか、その良さは伝わらない。「これほどいい物なのに。」と津山氏は落胆した。しかし、それで諦める津山氏ではなかった。せっかく開発した柿しぶ染めがこのままではもったいない!その強い思いから、効果を身近に感じてもらえるようにと「柿しぶ染めふきん」の製作を思いついた。「ふきん」ならば、今ある技術で簡単にできるという考えもあった。ただ、作るのならば世の中の人に立派な商品だと胸をはって言えるこだわりの品を売りたい。そこで、ふきんの生地は通常より丈夫な12枚重ねにし、繊維一本一本に柿しぶ染めが施されている「ふきん」を長く使ってもらえるように工夫した。実際に自分の工場で従業員の人達にも使ってもらい、その声を聞くことも忘れなかった。従業員からは、「水洗いだけで全く臭わない!」「食卓でも安心して使える!」と称賛の声が続いた。「これならきっと売れる。」こうした紆余曲折を経て、ようやく京秋桜の看板商品である「柿しぶ染めふきん」は完成した。

 

 初めは周囲から勧められネット販売からはじめた。しかし半年たっても音沙汰なく、失敗だったのではないかと不安になったという。良い商品を作っている事には自信があった。だがその効果を伝える事ができていないのではないかと考えた。そこで商工会に相談に行ったところ、百貨店で行っている販売促進会への出展を紹介され、80歳目前の津山氏自ら販売に出向く事にした。初めは今までやった事のない販売方法に抵抗があった。柿しぶ染は知っていても効果まで知る人は少なく、ふきんにしては500円と高価である。素通りする人も多かった。従業員の声や、商品にかけてきたこだわりには自信があった。素通りする人には、柿しぶ染の効果だけでも知ってもらおうとビラを制作して配布した。足をとめてくれる人には「柿しぶ染めふきん」の良さを丁寧に説明した。すると次第に客足は増え、お客様に柿しぶの効果を説明し納得して買ってもらえるようになった。時には初日に買ってくれたお客様がその効果を実感し、翌日に友人へのプレゼントとして大量に購入してくれる事もあった。「徹底的にお客様と話し合う事で、段々と柿しぶ染めの魅力を理解してもらえるようになった。何よりも自分で作った商品が自分の手で売れる事が嬉しかった。」と津山氏は語る。
 今ではリピーターも多く、お客様から"次はこんな商品を作ってほしい!"と多くの要望をもらうという。津山氏にとって展示促売会は販売しながらリサーチができる場である事がわかった。「全国を回って商品を売る事に疲労を感じない。むしろ楽しくてたまらない。」楽しんで仕事をしている事がお客様にも伝わっているように感じた。


 

 平成21年には木津川市加茂町商工会の推薦で東京開催のギフトショーに出展し、4社との新規取引が始まった。その中でも東京・表参道にあるショップではトップ商品として売れ続け、今でも毎月の受注がある。
同年、全国商工会主催のむらおこし特産品コンテストでも中小企業庁長官賞を受賞した。「受賞できた事は嬉しかった。そしてそれ以上にお客様はもちろん、出展先や取引先からも信頼してもらえるようになったことをありがたく思っています。」
 現在は高齢化社会に伴い、介護用の布団やベッドパッドの商品を開発している。「柿渋染めの効果が期待できる商品になることは間違いない。」と津山氏は意気込んでいる。
 「商工会には新商品のアドバイスから商品開発のための協力会社の紹介、全国の出展ブースまで紹介してくれる。そして何より商工会がバックについているとお客様の信頼度が高い。」ひとりで始めた会社だがひとりではなかったと嬉しそうに語ってくれた。
 時間のかかる先染め方法で柿しぶ染めを製造している会社は京秋桜以外にはいない。「競合会社がいないと発展するスピードが遅くなる事が悩み。」という津山氏のバイタリティあふれるコメントに驚いた。
 津山氏に今後の目標を尋ねてみた。「もっと先染め方法の柿しぶ染の良さを知ってもらいたい!まだまだ全国に売りにいきたい!」これからも自らの足で出会いを求めて販売しに行く予定だ。




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