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サクセスリポート  

■有限会社 松田精工
〒629-3134 京都府京丹後市網野町生野内1122-1
TEL 0772-72-1701 FAX 0772-72-1792 http://www.matsuda-s.com
動画は、http://www.youtube.com/watch?v=x-EfJ2a6mEw

 京丹後市の工業地帯の中で自らの強い精神をモットーに京丹後市初の「知恵の経営実践モデル企業」に認定され、中小企業のお手本となる会社へと成長させた代表に迫る!
 
 
 京都府北部に位置する京丹後市に松田精工はある。この地域は、地域全企業で製造業が占める割合が全国2位を誇る製造産業が盛んな地域であり、丹後ちりめん織物が有名である。そのような製造業地帯の中で、松田精工は板金加工から塗装、組み立てまでを一貫して行う機械金属業を営んでいる。
 松田精工は昭和61年に先代によって創業された。松田氏の入社当時は地元機械金属会社の下請け会社であった。しかし、その頃6Sという、整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、作法の理念が盛んに推進されており、松田精工も6Sの徹底を義務付けられ、業務以上に時間を掛けざるを得なかった。先代は職人肌で自分にしかできないモノづくりを目指していた為、規模も小さく家族経営であった当社では6S徹底は二の次となり、家族への重荷となって先行きが不安になりつつあった。そんな時、京丹後市大宮町にフィルター会社の工場ができ、板金加工の会社を探しているという情報を聞きつけた。当時は板金加工の会社は少なく、もしかするとこの地域でオンリーワン企業になれるかもとフィルター会社への仕事に将来性を見込み、取引きを始める事を決意した。当時高額であった板金加工の機械もなかった為、中古の曲げ機械や切断機を購入し、その取引に賭けたという。それが現在の松田精工に至る第1歩となった。

 
 平成16年頃まで、フィルター会社からの業務1本で売上のほぼ全体を占めていた。しかし、松田氏はその事に不安を感じていたという。「今はこのままで良いのかもしれない。しかし、フィルター会社に依存しすぎているといつか大変な目にあう。」と考えていた。そこで松田氏は2つの強化対策を実施した。1つ目は、フィルター会社以外への営業である。今まで、営業自体をやった事がなく、全ては自己流でやるしかなかった。アポイントなしで訪問し、松田精工でできる事を兎にも角にも夢中で話した。松田氏は当時の事を振り返り「本当にうさん臭かったと思います。」と笑って話してくれた。現在では約30社と取引きをしており、松田氏と長年一緒に仕事をしている工場長は「営業の術は知らないが、やりもしない事を出来ないといわないという社長の人間性を売りに回った成果が結果に繋がったのではないか。」という。取引先には「もっと早くから松田精工さんと仕事をしていればよかった。」といってもらえるまでになった。2つ目として、自社開発製品の強化である。今まで、常に「あったら便利だろうな」という思いから、丹後地方は漁業も盛んな為、魚を自動で乾燥させる機械や、趣味の草野球で使う持ち運べるカウント表示器など自社でオリジナルの機械を製作してきた。現在はまだ売り上げの10%にしか満たないが、今後も自社製作した商品の開発と販売に意欲を燃やしている。
 実際、思っていた通りフィルター会社では板金加工の部門を内部につくり、松田精工との取引は減少していった。しっかりと対策を立てていた事で大した痛手にはならずに済み、そのおかげで現在の松田精工があるといっても過言ではない。

 

 自社開発製品の中で現在、特に注目しているのは「農機具」である。現在、都会暮らしだった人が退職後、田舎で農業をしたり、若者の農業生活も増加している。京丹後市でも農業で生計をたてている人も多く、近所の人も農機具が壊れたらよく修理してほしいと松田氏の元を訪れるという。地域の人とのふれあい大切にする松田氏は全て無償で修理を請け負っている。そこで、地域の方との対話が新たなヒントとなるという。「地域の方にはどのような作業が体力的にしんどいか、どの作業が手間がかかって大変かという世間話を聞く。昨年は、特に不景気で仕事がなく暇を持て余す時期もあった。そんな時こそ、修理依頼をしてくる地域の人達の地元の声をゆっくりと聞けるチャンスであり、そのチャンスが自社製品開発のチャンスに繋がっていく。農機具にはまだまだ足りていないモノが多く、それを宝物として商品に変えていきたい。」と松田氏は意気揚々と語ってくれた。
 最近はその声を元に「回転式穴開け機」という農機具を開発した。畑でよく見かける黒いビニールシートに苗植え用に穴が開いている物は全て農家の人が手作業で行っている。「ビニールシートの上を回転させる事で、一定間隔で穴を開けるため、いちいちしゃがんで穴を開けるという作業がなくなる。自分の造る製品でもっと作業が楽になればいい。」という松田氏の強い思いから作られた製品である。


 
「回転式穴開け機」に自信を持った松田氏は特許を出願しようと考えた。出願書の作成などの支援や、疑問点・不明点を解決してくれたのが商工会だった。支援を行うだけでなく、特許をとる事で「知的資産経営報告書」を作成したらどうかという提案をしてくれた。「知的資産経営報告書」とは京都府では「知恵の経営」と呼ばれ、売上げを増やし、収益を増やす方法を見つけるための「マネジメントツール」である。更に府が評価して認められたものには、知事より「知恵の経営実践モデル企業」と認定される。今年(平成22年)2月に松田精工は「知恵の経営実践モデル企業」の認証を受け、京都府より「知恵の経営」推進融資や販路開拓のための支援制度を利用することができるようになった。京都府では21社目、京丹後市では初の認定である。「商工会の薦めがなかったら、知的資産経営報告書も作成していなかった。」と松田氏は商工会とは本当に良いパートナーだと感謝している。 松田氏の今後の目標として、「今までのお客様をもっと大切にしたいという。その要望に応え、お客様にもっともっとかわいがってもらえる会社になりたい。そしていつかは自社製品が売り上げの100%を占め、全国に製品が知れ渡ってほしいという密かな野望がある。」
 最後に中小企業の方へのメッセージを頂いた。「ビジネスチャンスは3回4回もこない。どこかで生まれるチャンスを大事にしなければいけない。いずれ輸出大国の日本は円高の影響で輸出もできなくなるかもしれない。そんな時は自社製品しかない。どんな事も初めから出来ないと言わず、儲けを考えずまずやってみる。それがいつか実を結び、返ってくるだろう。」
 松田精工には掲げている、「3I」というモットーがある。「1.昔の事はいわない 2.人の事はいわない 3.やりもしない事をできないといわない」これからもこの松田氏の精神は、様々な中小企業のお手本になるとともに、松田精工を発展的な企業に作りあげていくことであろう。




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