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サクセスリポート  

■株式会社ムラタ瓦
〒622-0032 京都府南丹市園部町高屋妙見10
TEL.0771-62-2054 FAX.0771-63-0570
http://www.muratakawara.jp

 京都御所をはじめ、様々な社寺や一般民家の瓦屋根を施工してきた『ムラタ瓦』。 ムラタ瓦では、技術・技能を向上させる以外にも、多種多様の取り組みを実践している。 施主からの信頼を受けながら、100年以上も続く「ムラタ瓦」の真髄に迫る!!
 
 
 京都府南丹市園部町に位置する、「ムラタ瓦」は時代と共に瓦の製造から瓦屋根の施工へと変革を遂げながら、瓦一筋で100年以上続いている老舗企業である。 「ムラタ瓦」は前身となる「村田製瓦所」から始まった。明治21年、初代・村田繁蔵氏が修行を積み、瓦製造を始めた。その当時、粘土は田を借り粘土部分を手作業で掘り起こす事で、無料で手に入れていた。良い粘土がある田を求め移動しながら、最終的に現所在地である園部へ辿りついたという。そして、時代の移り変わりと共に瓦の施工業へとシフトしていく事となった。
 四代目である良智氏が「村田製瓦所」に入社したのは昭和60年。小学生の頃から父親の仕事場について行き、小学校の卒業文集にも“父親の跡を継ぐ”と書いていた。中高と成長する中で休みの時は常に家業を手伝った。「お金は、一度ももらった事はありません。自然に仕事を頑張った結果が報酬につながる事を、父に教えてもらったのかもしれません。」高校卒業後、迷いもなく瓦業界へ入った。愛知県まで修行に行き、頑固な親方の下で働いた。一日中厳しく叱られる日もあったが、仕事はしっかりやらせてもらえた。瓦葺の仕事をして初めて思った事は“おもしろい!!”という気持ち。「それまでは特に目立って出来る事がなかったから、良い成績が収められた瓦施工の仕事が楽しくて仕方がありませんでした。」
 2年間の修行を終え、「村田製瓦所」の一員となった良智氏は、早速父親から現場を任された。しかし、現場の大工さんに毎日の様に「今日、おやっさんは?」と聞かれ、なかなか信頼してもらえず悔しかったが、同時に人としての信用の大切さを痛感した。
 平成2年、父親の夢だった“村田製瓦所を会社にしたい”という気持ちから「株式会社 ムラタ瓦」が誕生した。

 
 平成になってからは、京都府瓦工事協同組合や京都府技能士会等に加入し、他の瓦職人さんとの交流によって、様々な事を学び、技能や技術の向上へと繋げた。常に高い技術力と機動力で、数多くの民家や寺社等の受注が徐々に増え、平成4年には京都御所の仕事を受けるまでに成長した。
 平成7年には、伝統ある瓦屋根を守る為、三代目と共に若い職人を育成しようと「ムラタ瓦塾」を立ち上げた。瓦施工の技術だけを教えるのではなく、少しでも魅力ある職人が一流の技を持ってもらいたいと、人育て、技育てを共に取り組んでいる。3年間の塾での修行を終えた後は、そのままムラタ瓦に残る者もあれば、実家に戻り家業を継ぐ者もいる。現在まで、17名もの有能な卒業生を世に送り出してきた。
 「ムラタ瓦」では良い技能を磨くだけではなく、職人の人育てを大切に、施主様に安心や、信頼を得る事ができるように取り組んでいる。まず仕事の話を受けたら、現場予定確認票で、工事前から完成後までの事を、誰が職長になっても同じ対応ができるように、常に確認しながら進めるように徹底している。また、仕事が完了後、職長が直筆の手紙を施主様宛てに書き、感謝の気持ちとこれからもいつも見守っている気持ちを綴っている。また、クレームが起こった場合や改善すべき事を、毎月行う作業改善報告会議で、話し合いの場を持たせて、お互い共有する事で再発防止と改善を心掛けているという。現在では、そのような様々な取り組みを会社経営に活かすために、良智氏自らが「知恵の経営報告書」を作成し、自社の経営の見直しを行っている。※ムラタ瓦「知恵の経営報告書」知事認定決定
 

 良智氏に、ムラタ瓦のこだわりについて訪ねてみた。「やはり瓦屋である為、技能や技術に強いこだわりを持っています。」良智氏は平成9年の技能グランプリ・瓦葺き部門で優勝しており、社員も積極的にコンテストに参加したり、資格を取得したりと、常に向上心をもって働いている。
 ムラタ瓦では、技能・技術の向上の為の環境を整え、自分に対して投資のできる職人を応援し、安心して働けるように施工業者にはめずらしい取り組みを行っている。普通、瓦の施工は天候に左右されやすい仕事でありながら、“年間休日カレンダー”を導入して、決まった休日をとれるようにしている。また月給制にする事で、社員に安定した給料を支払っている。その他、食事会や研修旅行、社員やその奥さんへの誕生日プレゼント等、独自で考えた方法や他企業が実践している事を真似たりして、社員の安心の為の取り組みを行っている。そして何よりも一番の安心はムラタ瓦が継続出来る仕事がある事だと良智氏は考える。「社員には自らの安心の為にも、現場での、常の自分の後姿や対応全てが営業だと言っています。」良智氏は社員に、仕事をしながら営業している。一人ひとりが魅力的な職人になる事が、次の仕事に繋がると語る。


 近年、不景気と言われている中で、新たに営業活動もするようになった。既存や新規の工務店、文化財関係そして一般顧客等にまめにアタックする事で、仕事に繋がると考えている。「押し売りをするわけでなく、ここにいるという存在を示したい。」地道な努力はきっと結ばれるはずである。
 良智氏の今後の目標は二つ、ムラタ瓦を京都府の文化財指名業社にする事、そして瓦の需要が減少している中、地域の方にもっと身近に感じてもらえる、地域に必要な瓦屋を目指しているという。
 現在、良智氏は1年前に交通事故で足を負傷し、松葉杖生活が続いている。もちろん屋根に登って働く事はできない。しかし良智氏は、「きっと人材育成に力を注ぐ為の時間を与えられたのだと思います。怪我をした事で、経営や人材育成について見直せる時間ができた。」と強く意気込んでいる。今年の春には、久しぶりにムラタ瓦塾に塾生が入ってくる。良智氏は瓦屋根を守る為、本物の職人を育成する為、誠心誠意指導していくのであろう。



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