カフェのオープンは、生産設備の規模拡大を視野に入れていたころ、商品のファンになった人々が工房を訪ねて来たことをきっかけに着想した。全くの構想外だったが、訪れる人々の多くが“大自然に癒された”と喜び、そのイキイキとした表情に心を動かされた。
「都心からこられる方のなかには、とても疲れていらっしゃる方もいました。和知の自然に癒され、元気になって帰っていかれる。それもこの田舎だからこそできること。昔から人を癒したり、元気付けたりすることが好きなんですよね」と石橋さん。
選んだ土地は、由良川がすぐ隣に流れるなだらかな高台。四季折々に移ろう丹波の山々が、あたりの景色を優しく包み込む。しかしそこは、もともと町の所有地。景観への配慮等の諸問題で反対も多く、交渉は難航した。石橋さんらは行政を納得させるための店舗コンセプトの検討・提案を何度も行い、商工会の職員をはじめとする多くの人のバックアップで説得にこぎつけた。今では都心や他府県からのお客さんだけではなく、地元の人々がお洒落をしてくつろぎの時間を楽しみに来る「お出かけスポット」として愛されるまでになったという。
ちなみに、新工房の移転に際して「オーガニックケーキ工房 菓歩菓歩」は、「bio sweet`s capocapo 菓歩菓歩」に屋号を変えた。Bioとは、オーガニックと同じ意味を持つが、ブームの中、言葉が独り歩きをしていたため本来の意味に立ち返りたかった。本来のオーガニックとは、自分自身の生命や健康、ひいては地球環境を守るために有機食材を選択するライフスタイルまでを含めた広い意味を持つ言葉なのである。