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「舟屋」があることで有名な京都府伊根町。ほぼ海沿いに位置するこの町に「兵四楼」はある。
店内に入ると、すぐ目にはいるのがカウンター。そこには、御主人である前野さんが力強く腕を振るっている姿が目に入ってくる。
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「飲食店を営むという考えは小学生のころからありました。」
当たり前のように語る前野さんは明治時代から続く老舗旅館「兵四楼」の四代目である。生まれた頃から三代目である父親の背中を見て育ったせいか、物心つく頃には、いつかこの店を継ぎたいという思いはあったという。
高校を卒業後、大阪の南(みなみ)の割烹料理店で8年間修行した。その間2、3軒で修行したがいずれも大勢の従業員を抱える店であったせいか、いざこざが絶えなかった。それを目の当たりにした事で、技術もさながら人間関係の大切さを一番に感じ取ったという。
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修行を終え、伊根町に戻った前野さんは、従来の顧客だけでなく、新たな顧客を獲得する必要性を感じていた。海水浴や、釣りのシーズンに訪れる家族層が主だった兵四楼にとって、今後は幅広い観光客を取り入れていく必要があったのだ。
「新たなお客さんに来ていただくには、店の雰囲気、メニューにも工夫が必要ではないかと考えました。そこで、店の雰囲気を「いやし系」に改装することで、観光客も入りやすく、また地元の人達が集まっても落ち着ける店内にしようと思ったんです。」
と語る前野さん。
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まず資金面では、商工会の「制度融資」や「伊根町商工業振興対策事業」を利用し、また、経営面や技術面では、連合会事業の「エキスパート制度」を利用することで、様々な相談をすることが出来た。
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メニューにも工夫を凝らした。それは、一般には保存食として知られている「へしこ」を使った「へしこ寿司」の創作である。「へしこ」とは魚を米糠と塩で漬け込み熟成した郷土料理である。寿司としてにぎったへしこ寿司は、、たっぷりのショウガやネギと一緒に出される。ご主人の独創的なアイデアによって産み出されたこの「へしこ寿司」は、最近、TVなどの影響でへしこが知られるようになり、注文される方もかなり増えたという。
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今後は隣接する旅館の方の改装も思案中で、更なる顧客獲得へ意欲的だ。前野さんの独創的なアイデアに大いに期待したい。
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真剣な表情と力強い腕でカウンターに立つご主人には、職人のイメージがぴったりである。その存在感と落ち着いた店内の雰囲気が、マッチしているのは、前野さんの狙いが成功したといって間違いないだろう。
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