三種の神器のひとつとして洗濯機が世に普及し始めて以来、家庭で洗えるものは家庭で、家庭で洗えないものは、クリーニング業の役割だった。しかし、時代と共にクリーニング業も変化を遂げる。
株式会社アグティでは現在、自分で洗濯ができない人に代わって私物を洗濯する“洗濯代行サービス”が人気を博している。
元々、医療施設の寝具を扱う企業に勤めていた十時氏は前職の繋がりもあり、医療施設の日常清掃業務を主な仕事として独立開業した。そして次第に清掃一般から、タオルやカーテンなどの業務用クリーニングを依頼されるまで医療福祉施設との業務関係も進展し、その流れで次々と事業を拡大していった。特に転機となったのが、施設利用者の私物を代行して洗濯するシステムの開発だった。いまや利用者7000人のサービスに至る私物の洗濯代行システムだが、サービスの成長には、特許取得した洗濯用ネット“アグネット”の開発という影の努力があったのだ。
私物の洗濯代行システムの開発は、そもそも大手クリーニング会社から依頼された私物クリーニングでの失敗からはじまった。依頼先から、個人の洗濯物がネットいっぱいに入った状態で届いたものを、同社では洗剤が絡むように他のネットに分けて洗濯していた。しかし、ネットからの出し入れを繰り返す事で、洗濯物が紛失する。十時氏は頼まれた仕事を完璧にこなせない事が悔しく、連日連夜、従業員との改善会議を行った。そこで出た答えは洗濯〜乾燥の工程まで取り出さなくて済むネットの開発。一人ひとりアイデアを出し合い、魚釣りで使用する網カゴからヒントを得、通常はふつうの大きさだが、洗濯乾燥時はチャックを開けて4倍程の大きさになる円筒状のネットを発案したのである。早速知り合いに縫製してもらい、失敗を重ねながら、最終的には何度洗濯しても破れにくいスーパーネット“アグネット”の開発に成功したのである。このネットのおかげで作業はスムーズになり、紛失の問題も解消され、代行サービスへの大きな足掛かりとなったのである。