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サクセスリポート  

■株式会社アグティ
〒613-0024 久世郡久御山町森村東232-1
TEL.075-633-6655 FAX.075-633-6657
http://www.agt-kk.co.jp/

 高齢化が進む日本において、医療福祉施設での洗濯請負業務は欠かせない存在となっている。株式会社アグティは、医療福祉施設の清掃業務からカーテンクリーニング、そして昨年個人向けの 洗濯代行サービスを開始し、その仕組みに対して京都府から経営革新計画企業の認定を受けた。
常に世間のニーズに沿った新サービスを生む為に、現場では日々将来を見据えたディスカッションが重ねられていた。


 
 

 三種の神器のひとつとして洗濯機が世に普及し始めて以来、家庭で洗えるものは家庭で、家庭で洗えないものは、クリーニング業の役割だった。しかし、時代と共にクリーニング業も変化を遂げる。  株式会社アグティでは現在、自分で洗濯ができない人に代わって私物を洗濯する“洗濯代行サービス”が人気を博している。
 元々、医療施設の寝具を扱う企業に勤めていた十時氏は前職の繋がりもあり、医療施設の日常清掃業務を主な仕事として独立開業した。そして次第に清掃一般から、タオルやカーテンなどの業務用クリーニングを依頼されるまで医療福祉施設との業務関係も進展し、その流れで次々と事業を拡大していった。特に転機となったのが、施設利用者の私物を代行して洗濯するシステムの開発だった。いまや利用者7000人のサービスに至る私物の洗濯代行システムだが、サービスの成長には、特許取得した洗濯用ネット“アグネット”の開発という影の努力があったのだ。
 私物の洗濯代行システムの開発は、そもそも大手クリーニング会社から依頼された私物クリーニングでの失敗からはじまった。依頼先から、個人の洗濯物がネットいっぱいに入った状態で届いたものを、同社では洗剤が絡むように他のネットに分けて洗濯していた。しかし、ネットからの出し入れを繰り返す事で、洗濯物が紛失する。十時氏は頼まれた仕事を完璧にこなせない事が悔しく、連日連夜、従業員との改善会議を行った。そこで出た答えは洗濯〜乾燥の工程まで取り出さなくて済むネットの開発。一人ひとりアイデアを出し合い、魚釣りで使用する網カゴからヒントを得、通常はふつうの大きさだが、洗濯乾燥時はチャックを開けて4倍程の大きさになる円筒状のネットを発案したのである。早速知り合いに縫製してもらい、失敗を重ねながら、最終的には何度洗濯しても破れにくいスーパーネット“アグネット”の開発に成功したのである。このネットのおかげで作業はスムーズになり、紛失の問題も解消され、代行サービスへの大きな足掛かりとなったのである。



 

 「施設の洗濯代行サービスを始めてから、利用者が入院療養を終え、自宅に戻った場合どのように洗濯をしているのだろうか、という疑問がふと頭をよぎったんです。」と十時氏は語る。
 そこで今までやってきた洗濯代行サービスのノウハウを活かし、家庭まで洗濯物を受け取りに行き、お届けするという“個人向け洗濯代行サービス”を開始。その際、利用者が医療施設から個人となることで一番大きな負担はデリバリーであると考えた十時氏は、サービスの開始と同時に広地域のクリーニング業者からパートナーを募るという手を打ったのである。同業者とネットワークをつくりながら効率良いサービスを提供し、多くの高齢者の負担を解消しているのだ。最近では京都府社会福祉協議会との共同事業として、“個人向け洗濯代行サービス”と高齢者の安否確認をセットにする事業も実施しているというから驚きである。
 平成23年、株式会社アグティは商工会からの申請の薦めもあり、“個人向け洗濯代行サービス“で京都府の経営革新計画企業に認定された。この認定は従業員に更なる自信をもたらし、モチベーションの向上に繋がったという。まだまだ始めたばかりのサービスだが、十時氏は日々改善を重ねることで確実に顧客を増やす自信がある。そして、その背景には社員と会社の将来を見据えた日々のディスカッションの積み重ねがあったのだ。



 

 アグティのビジネスにおける最大の強みは“何年越しをも想定した事業計画”にある。社長と社員の間では頻繁に打ち合わせが開催され、医療福祉の現状から世界情勢に至るまで様々な会話を交わすという。しかし、アグティでの社内会議では的が絞られた結果だけが並ぶわけではないのが重要なポイントだ。どんな状態にもケースバイケースで対応することができるように「万が一、こんな状態になったらどうするか。」という様々な方向性を想定するのである。一つの観念に固定されるのではなく、何が起こっても素早く対応できる柔軟な考え方をもつ事。「私たちが現場で話している事業計画は、時間はかかっても必ず実現しているのです。」十時氏は満足そうに語ってくれた。アグティの成功は完璧なイマジネーションがもたらしたものなのである。
 十時氏のモットーは『仕事とは喜ばれ作業である』ということ。従業員には常に言い聞かせ、自分の目の届かない所での決断は、リスクを背負う結果になってもお客様が喜ぶ方法を判断基準として選択してほしいと伝えている。相手に喜んでもらう事がサービス業の最大のルール。従業員にはそれを理解した上で業務に取り組んでほしいと願っているのだ。



 十時氏が最近特に力を注いでいるのが、障がい者の就労支援である。今現在、静岡県伊豆市にあるリハビリ病院の中に洗濯設備を投資し、洗濯業務を請け負っている。その病院では通院している障がい者の方がリハビリとしてクリーニング作業を行う。リハビリという治療の一環として作業をしながら、賃金も支払われるという、医療・行政・民間の三位一体である全国初の試みを実践しているのである。
 アグティ自体でも、いつの日か障がい者の雇用を生み、それが高齢者の身の回りの役に立つというビジネスモデルをつくるという構想を描いている。これは十時氏が絶対にやり遂げたいという事業のひとつ。必ず実現してくれるに違いない。
 このような様々な考えが生み出されるのも全て、ディスカッションの現場。「決してタイムラグを出してはいけない。世の中にマッチしたタイムリーな対応が必ず功を奏すのです。」と十時氏は力強く語る。企業として生き残っていくこと、そして、更には社会に活かされる企業、必要とされる企業になる為に、十時氏はこれからも従業員と話し合うことを決して辞めないであろう。



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