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サクセスリポート  

■三和モーター商会
〒620-1425 福知山市三和町菟原下16番地の8
TEL.0773-58-2692 FAX.0773-58-3797
http://www.kisnet.ne.jp/~miwamotor/


 少子高齢化の進行に伴い、人口減少が著しいことを背景に、自動車がなかなか売れなくなる中、顧客の囲い込みに動くカーディーラー。
その動きに三和モーター商会は独自サービスの提供や、様々なアイデアによって対抗し、地域の人々の心を掴み続けることに成功している。
独自サービスを生み出し続ける源泉は、常に新しい情報を集め、人の言葉に真摯に耳を傾け、貪欲に学び続ける姿勢にあった。

 
 

 三和モーター商会は、京都府中部の京丹波市と福知山市の間の山間に位置する三和町にある。自動車販売と整備そして自動車保険を扱う同社は、社長の真一氏と奥さんそして整備士の従業員三名という小規模な会社ながら、ガソリンスタンドチェーンやカーディーラーとは差別化した独自のサービス提供やアイデアで、地元の人々の心を掴み続けている。
 三和モーター商会の創業は51年前。生まれ育った三和町で商売をしたいと心に決め、京都市内の京都ホンダモーターで修業をしていた真一氏の父・太一氏が地元へ戻り、自宅を改装して自転車とバイクを取り扱う店として開業した。自動車の販売と整備を学んで来たものの当時の三和町地域には自動車の需要はほとんど無く、バイクさえもまだまだ少ない状況ゆえの選択だった。しかし、開業してすぐにバイクの販売が順調に伸び、間もなく自動車を取り扱うようにもなった。自動車時代の到来を感じ取った太一氏は新しく国道9号線が出来たのに伴い、その沿線に工場と店舗を移転した。
現社長の真一氏が誕生したのはこの頃のことだ。  
「僕には姉がいて、小さな頃から姉には『あんたは家を継いだらええんやから、道が決まっててええなぁ』と言われて育って来たんです」という真一氏だが、中学生の頃には「決められた道」ではなく「ものづくり」に憧れ、舞鶴の高等専門学校への進学を選び、卒業後も自動車とは全く関係の無い会社に就職した。
しかし、就職して二年後、それまで自ら自動車運転免許や整備士資格を取って家業を支えて来た母親が体調を崩した事をきっかけに真一氏は父親の会社を継ぐことを決意。この頃すでに次々新しくなる自動車について行けなくなり、自社では整備をほとんどやっていなかったため京都市内の自動車販売会社に転職し、修業した上で故郷へ戻り父親の会社に入社。
それから8年間父親のもとで働き、平成12年に新社長に就任、事業を継承した。

 

 こうして真一氏は事業を継承したのだが、真一氏による事業変革はそこからいきなり始められたことではない。「引き継ぐ前から自分のやり方でやりかけていた」。例えば母親と事務員さん二人がかりでやっていた手書きの経理処理に、パソコンを導入して作業負荷を軽減している。だが、真一氏に元々そんな知識があったわけではない。
経理は全くの素人で、職業訓練所に通って簿記を習い、コンピューター会計はほぼ独学で学んで導入した。これを手始めに事業を見直しする計画は着々と進められていた。
 少子高齢化は地方では特に顕著で、人口は減少する一方だった。それに伴い自動車もなかなか売れなくなると、ディーラーはお客様の囲い込みを始めた。父親と母親がやっていたような整備業務を縮小した状態ではとてもやって行けない、そう考えていた真一氏は事業を引き継ぐと次々に三和モーター商会独自のサービスを打ち出した。
最初に打ち出したのが「エンジンオイルキープ」だ。オイルをあらかじめ20?購入してもらい、キープしていただいたお客様には無料点検を実施するというものだ。それまでは車検は受けても定期点検は受けられないお客様がほとんどだったので、下手をするとその間2年もの間全くコミュニケーションが取れないお客様が多かった。
それが、オイル交換なら2・3ヶ月に一回は必ず来てもらえる。こうしてお客様と話しをする機会を増やすことに成功すると、無料点検をきっかけとしてお客様への提案をどんどん進めたのだ。
タイヤやオートマチックオイルの点検など10項目に及ぶ点検項目を設定し、それぞれに点検結果や交換時期のアドバイスをするオリジナルのスタンプを作成。点検シートに押して「タイヤの残りが残りわずかです・おすすめのタイヤは…」「オイルを点検しました。交換をお勧めします…」など、点検結果と時期交換などのアドバイスを行う。
こういったきめ細かなアイデアを次々実施して行ったのだ。

 

 「エンジンオイルキープ」は一見「売らんかな主義」という取り組みに見えてしまうがそれだけではない。ガソリンスタンドやディーラーなどでは通常揃えているオイルは2〜3種類で、特にガソリンスタンドなどは安いオイルを安く提供することを売りにしている場合が多い。
ところが同社は10種類ほどのエンジンオイルを常備し、車の種類に応じて最適なものを提供している。例えばハイブリッド車などの低燃費車には粘度の低いやわらかめのオイルを勧め、ヨーロッパ車の大排気量車やスポーツカーには粘度の高い固めのオイルを勧める。
そして、このオイルの違いを説明するためにペットボトルを利用してオイルの粘度比較サンプルを自作したり、オイルを変えたことによる燃費の改善実績表を自作したりしている。お客様に勧める限りは、それがなぜ必要なのか、交換することでどんなメリットがあるのか、交換しなければどんなリスクがあるのかなどを丁寧に説明する。だからこそ地域の人々の信頼を勝ち得ているのだ。
 こうして、オイル交換をして軽乗用車なら3000円程度の売上で終わっていたものを、バッテリーやタイヤ、ワイパーゴムの交換などの売上につなぎ、さらにはお客様に感謝さえしてもらえる関係作りに成功している。

 お客様をしっかり掴んで離さないきめ細かな独自サービスは、常に現状に満足することなく、新たなアイデアが次々注がれる。
 「目指すのは自動車の販売がゼロでも利益が出る仕組みづくり」という真一氏は、お客様に何でも相談してもらえる関係をいかに築くかを常に考える。
そのために次々繰り出される新たなサービスや提案は当然ながら何もせずにパッとひらめくものではない。
常に身の周りにアンテナを張りめぐらし、出入りの部品調達からも情報を引き出すよう努めている。
「どこそこのディーラーはこんなことをしている」「あのガソリンスタンドはこうしている」「あの修理工場が新しく始めたのは…」。
新たな動きをキャッチするのはここだけではない。
経営者の勉強会や中小企業向けの講演会といった商工会連合会などを通じて行われる講座などにも積極的に参加をする。
「同じ経営者の話を聞くことはとても参考になるし、その時すぐに実行できなくても後々役立てることもできる」という。
この他にも日々の業務に役立てているものがある。
参加する倫理法人会で配布される『職場の教養』という冊子だ。倫理法人会では朝礼を行うことを奨励していて、三和モーター商会でも昨年一人の整備士を社員に迎えてから朝礼を始めた。
朝礼ではその日の作業スケジュールを確認し合ってから『職場の教養』に書かれている仕事に生かせる様々な心得を音読し、お互いに感想を言い合う。
そこには実際に仕事の現場で起こったことが書かれているので、自分たちの仕事に置き換えて参考にすることもできるし、感想を言い合うことでお互いの考え方を知ることもできる。
これが社内の意思疎通だけでなくお客様とのコミュニケーションに生かされ、お客様からの評判にもつながっている。
「知恵の経営報告書」制作で見出した 今後進むべき道 昨年、三和モーター商会は創業50周年を迎えた。真一氏はそれを節目と考え、京都府が推進する「知恵の経営報告書」の作成に取り組んだ。知人にこの報告書の存在を教えられたことで興味を持ち、商工会連合会の相談員にやってみたいと伝えたことから始まった。
最初は希望者が何人か集まってスクール形式でいろいろと教えてもらうことからスタートした。指導を受けるうちにその中の本当にやる気のある人だけが残り、「やがてそれぞれが報告書を書き上げて次々抜けて行く中、僕だけがどんどん取り残されてしまいました」。
結局一年半くらいかけて報告書は完成した。そうまでして報告書作成をやり遂げたのは、ここまで自身も父親から引き継いでがむしゃらにやってきたが、なぜ50年もの間お客様に支持されて来たのかを振り返り、自社の強み弱みをハッキリと知り、その上で今後自社が進むべき道を探りたいと考えたからだ。

 この「知恵の報告書」を書き上げたことで、自社の再確認をした真一氏は改めて三和モーター商会が今後進むべき道についてじっくり考えた。
自動車販売・整備業界はとにかく変化が早く先は見えない。
ハイブリッド車や電気自動車への移行など時代の流れはとんでも無く早い。だからこそその流れに乗り遅れないようにより一層の取組みをして行かなくてはならないと考えた。
「苦手というか、あまり得意ではない」と言いながらも商工会のセミナーで教わったブログによる情報発信もスタートさせ、新たな商材として「メンテナンスリース」の取り扱いを始めた。
メンテナンスリースは車検、オイル交換、整備そして税金という車に乗るために必要なすべてをまとめたリースで、同社が目指す「自動車の販売がゼロでも利益が出る仕組みづくり」に繋がるものだ。
始めたばかりでまだ販売に至っていないと言うが、真一氏の語り口からは笑みが漏れる。
目の前にある様々な課題をクリアし、地域に根差した自動車販売・整備業の先駆的存在として地域の人々の心を掴み続けるに違いないと確信した。


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