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サクセスリポート  

有限会社 藤岡工務店
〒629-0311京都府南丹市日吉町胡麻古津13-1
TEL.0771-74-0241 FAX..0771-74-0801
http://www5f.biglobe.ne.jp/~hirainaka/fujioka/


 実力のある企業なのに、PR・情報不足のため存在を知ってもらえずなかなかチャンスに出会えない…そんな話は業種問わずにあるだろう。

南丹市日吉町で工務店を営む藤岡裕英さんも不況を機に自ら動いた一人。
逆風の中で知恵を絞り、会社を一回り強く・魅力的に成長させた努力とは?

 
 

 古くから良質な木材産地として知られる南丹市日吉町で国産の杉や檜を使い、天然無垢材の魅力を生かした本物志向の家づくりを行う老舗・藤岡工務店。
長引く不況で、創業以来伸びていた業績が落ち込みはじめた平成16年に藤岡裕英さんは3代目を継いだ。 それまでは紹介などで仕事が舞い込んできたが状況は悪くなるばかり。

過疎・少子高齢化が進む域での将来をも考えた藤岡さんは「待っていても仕事はこない!」と新たに仕事を受注していくための方法を模索し始め、工務店の経営セミナーなどに参加するようになった。

 

 最初に取り組んだのは、自社で施工する家をシリーズ化し【いこいの家】として商品化することだった。そのために自分たちがこれまで何を大切にしながら家づくりを行ってきたかを整理し直し、コンセプトメイキングしたという。

そして「家族が気持よく憩える、自然と調和した安心安全・快適で頑丈な家づくり」をテーマに、ダイニングとリビングを重視した自由設計の3シリーズをラインナップ。独自の厳しい施工基準をもとに、ランク分けを行った。

 

 次に取り組んだのは、施工途中の骨組みや材質などを見られる「構造見学会」と、完成後の出来栄えを体感できる「完成見学会」の実施である。気軽にじっくり見て頂くため、営業スタッフを置かない代りに建材のパーツ展示や各部のこだわりを記した手作りボードやPOP、パンフレットなどを設置し楽しみながら回遊できる仕組みを作った。施工に携わった職人に質問し、実質的な家づくりのアドバイスを得られるのも好評だ。

 「当社のこだわりを理解してくれる人にこそ来てほしい」と藤岡さん。開催を告知するチラシの段階で関心を持たれた方だけに来てもらえるように工夫をした。例えばキャッチコピーで「20代の子育て夫婦が建てた家が見られる」や「暖炉が素敵と思う奥様へ」など施工主との対話から導き出した生の声を生かしこんなことが分かる?、こんな人に向いた見学会?ということを訴求。

 チラシのデザインもこだわった。文字を見ただけで藤岡工務店と分かるよう全て藤岡さんと奥様の手書きで統一。対象とする世代で色味やしつらえを変えたり、手に取るシーンを想定して紙質や形状を変えるなどしている。表現方法などのアイデアは「同業種の中で、一番最初に取り入れることが大切」と藤岡さん。その手法として異業種のDMやチラシなどを研究するのも効果的とか。

どれほど美しく作ろうとも、どんなにお金をかけようとも反応がなければただの紙屑である。知恵を絞ったアイデアで他社より目立ち、心響かせるには地道な努力と研究が必要なのだ。

 

 藤岡工務店では基本、営業スタッフを置かず、見学会でも「むやみに説明しない、背後霊のよう について歩かない」というスタイルを堅守している。氏曰く「話しかけられた方が、自然に応えられるんですよ。お客様から聞かれたことに対して、お客様が望む情報をご提供して、そこからコミュニケーションが広がり結果的にウチを気に入ってくれはったら、それで当社の営業はOKなんです」と。

ゆえに、見学会では設計を行う藤岡さんを始め、現場の職人が接客に当たる。来場者は疑問や質問を家づくりに携わった職人に直接聞くことができる。予め用意されていた教科書通りの答えではなく、実際の施工や経験を通した実質的なアドバイスを聞くことができるのだ。

また接客においては家族連れの対応に特に気を付けているという。特に、幼児・子連れの場合は藤岡さんの奥さんが子守りを行い、両親が安心して家づくりの説明を聞くことができるように配慮しているとのこと。家の購入は家族の一大事業だが、概ね妻側が主導権を握るので奥様にいかに好印象を与えるかも重要なのだという。

 

 構造及び完成見学会は、施工主であるお客様の許可の上で初めて実現する。「お客様が公開したくないといえばできませんし、ウチも大切な家を貸して頂くわけですから、お客様にとってもメリットがあるよう様々な"気が効く"サービスをさせて頂いています」と藤岡さん。

例えば、現場見学会の開催することを了承して頂ければ、色々なサービスで対応するそうだ。「2回で4日間の見学会が条件ですが、何日でもお貸ししますって言って頂くお客様が結構おられるんですよ(笑)こちらも、見学会のお陰で次のお客さんと出会うことができますので、お客さんも嬉しいし、自分とこも嬉しいしで一石二鳥ですよね。」と話す。
藤岡工務店の76年の歴史は、家づくりの歴史だけではなく人付き合いの歴史でもある。
家を作ったらそれで終わりというのではなく、アフターフォローや何かあった時の家のドクターとして駆けつける。

双方に気持ちの良い関係を築くこと、それも大切なことなのである。

 完成までには半年かかったというこの報告書は、「結果として昭和11年からの自社の歴史も含めて、家づくりに関する知識や技術、こだわり、顧客とのお付き合いに至るまで、知恵として整理できたのがよかった」と話す。

報告書の認証を決める審査会のプレゼンを前に、半年かけた甲斐があった?と心から思ったそうだ。「自分の会社の強みが分かりましたし、多分このような機会がなければ、振り返ることがなかったと思う。機会があれば、皆さんもぜひチャレンジすることをお勧めしたい。」と藤岡さんは語る。

また、取材中「 不況が知恵を授けてくれた」と話されたことは非常に象徴的だ。自ら考え、行動するには、現実に直面するところからしか始まらない。

逆風を恨むのではなく、追い風に変えるこの強さを見習いたい。


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