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サクセスリポート  

三共電気商会
〒629-2312 京都府与謝郡与謝野町四辻
TEL.0772-42-3365 FAX.0772-42-0301

 厳しさ増す家電業界で、価格ではなく独自のサービスで地域の厚い信頼を獲得している三共電気商会。町の電気屋さんだからこそできる、地域のお客様に愛される仕事とは?与謝野町初の「知恵の経営報告書」認可企業の代表と次期代表にインタビューした。

 
 

 与謝野町にある三共電気は、代表の浪江武志さんと後継者の息子・一徳さんを中心に、7名のスタッフで頑張る町の電気屋さんだ。
訪問による家電販売を軸に、修理サポートか ら家庭の電気工事、浴室等のリフォームまで「かゆい所に手が届くサービス」を武器に地域内を精力的に奔走している。武志さんが二代目を継いだのは、高度経済成長期まっ只中の昭和43年。

もともと配線等の工事を主体にしていたが、好景気による家電需要の高まりから現業態にシフトしたそうだ。
かねてから大掛かりな工事関係より人々の暮らしに直に接するきめ細かな商いが自身には向いていると感じていた武志さん。電気工事で培った知識と技術力に合わせ、販売から修理まで親切丁寧にお世話する仕事ぶりで地域に厚い信頼を築いていった。

 

 平成に入ると景気の悪化と共に家電量販店の進出が始まった。価格ではなくサービスで勝負する同店は、個々のお客様と今まで以上の繋がりを作り、より積極的に購買意欲を掘り起すため当時としては画期的な女性スタッフの戦力化に取り組んだ。

現在、店の中核として活躍する「コミュニティ・レディ」の始まりだ。「ある意味御用聞きです」と言うよ うに、彼女らは地域のお得意さんの元に月に一度定期訪問し、購入後の商品の具合やお困り事、疑問はないかを拾っていく。持ち帰った情報は社内で共有し、アフターフォローや新たな提案に繋げていく。「台所から洗濯、掃除まで生活家電の多くは女性の方が共感できる部分も多い。女性だからこそ受け止められる要望や苦情もあると思い導入した」という。

一世帯あたりの年間購買額が全国平均の2倍という数字は、こうしたお得意さんとの厚い信頼関係を作り上げるコミュニケーションの賜物だろう。今では収集された様々な情報は社員全員が閲覧できるようデータベース化されサービス向上や販促に生かされている。

 

 一方、高齢化と人口減少による顧客対策として、新規客や新たな需要の獲得にも努力している。その一つが、二年前から一徳さんが手掛けているチラシ「ぽつぽつ ぽりぽり」だ。月に一度、様々な独自サービスや季節の一押し商品、耳より情報を織り交ぜ配布している。きっかけは今から3年前のこと。
ケーブルテレビの敷設で環境が整いインターネットを活用する人々が増えたものの、フォローの受け口が地域になく困ったお客様が問い合わせてきた。一徳さんは、その前からパソコンの接続・設定サービスやサポートを行っていたため快く引き受けたが「まさか町の電気屋さんがネット関係のサポートをしてくれると思っていなかった」と驚かれたそうだ。  
「ネットだけではなく極端にいえばウチは電池一個のお届けからリフォームまで色々なことをやります。でも、そういうことは店側からきちんとPRしないと声をかけてすら頂けないのではと気が付いた」という。

そしてメーカー任せだったチラシを自分で作り始めた。いざ配布すると反響は予想以上。「チラシと言えば毎週届くのは量販店のものばかりですが、皆が皆、値段の安さだけ を求めているわけではない。例えばちょっとしたことが分からなくて教えて欲しいとか、隠れたニーズは沢山あります。

家電は生活に密着している分、電気屋さんも探せば仕事は山ほどある。自分たちだからこそ出来ることを発掘し、それをどんどん発信して町の電気屋さん?の魅力を世間に 伝えたい」と話す。チラシを見たご新規様からの問合わせも増えているそうで「お陰様で反応は上々」と武志さんも満足顔だ。

 

 後継者である一徳さんは現在、これまで同店が積み重ねた実績やノウハウの整理と事業全体のシステム化を進めている最中だという。 より顧客目線に立ったサービスの向上にも注力されているが、同店がこだわるサービスのなかでも特にこれからはスピードを重視していく構えだ。

同店では顧客から連絡があれば1時間以内には訪問するということを社内ルールとして決めているという。「1時間をこえたらスピード感はないのでキリを1時間にしています。もちろん、もっと早く対応できるなら、一刻も早くお客様のもとへ駆けつけられるように心がけています」というが、その狙いは「"あそこは電話したらすぐに駆けつけてくれる"というインパクトを付けること」にあるそうだ。

皆さんの中でも、家電量販店やメーカーのサポートデスク等に電話をして待たされた経験はないだろうか。実際の訪問となれば、2〜3日要するというのはよくあることだが、顧客からすれば緊急だからわざわざ連絡しているのであり、待たされる時間は不安やイライラとの戦い以外の何物でもない。しかし、そのストレスが解消されたらどうだろう。

「お客様から電話を頂いて、そこでハイ、伺いますとお答えして即訪問した場合、僕の経験の中では、ほぼ確実にファンになってくれます。離れられることがほとんどないんです。量販のチラシを見ながら、これをあんたところの値段で買うと。例え5万円高くってもです。お金じゃない世界を生んでしまうんですよ。スピードっていうものが」――驚くことに氏がそう話す通り、この即時対応を機にお得意さんになって下さったという例も多いそうだ。

 

 しかしそれ程のインパクト残していくことは、正直商売として大変なのではないか?そんな疑問に対して一徳さんは、「実は全然大変じゃないんです」と力強く切り返した。
「そこまでいけば、お客さんがファンになってくれるということです。かならず買ってくれる約束ができるじゃないですか。
大切なのは、連鎖を作ることです。電話したら1時間で来る。次も来る。繰り返せば他で買えないですよね。他のお店に電話して明日行きますとか、対応は3日後になります…となると、それじゃあ、いつもすぐに来てくれるあそこに電話しようという話になりますよね。そういった流れさえ出来れば、ウチらみたいな業態は全然やっていける。そういう流れを作り出せばいいんです」と教えてくれた。

スピードにこだわろうと思うと、必然的に機動性が重要になる。基本的に大量の量品を早いサイクルで売ってようやくまとまった利益の出る量販店にはまねができないことだ。また「これ以上規模が大きくなっても、今度はきっちりとした対応が出来なくなるのでだめなんです」と一徳さん。現状の店のスタッフの人数や能力、そして商圏などを考えてコントロールしながら最適のラインを見極めていくことが重要なのだという。

 また事業継承にも取り組んでいる一徳さんは、これから取るべき戦略について武志さんと日々模索しているそうだ。今年の夏、その一環として作成した知恵の経営報告書が与謝野町で初めて認可され注目を集めている。

同報告書の作成のために、今まで当たり前のようにこなしてきた業務を一から整理し、見直すことで、なんとなくぼんやりしていたサービスの形が明確になり、この先の具体的な指針に繋がったとのこと。

また世の中の流れと、その流れの中にある自社の立ち位置を知ることで、今まで思いもつかなかったアイデアが次々と浮かぶようになったといい、「三共電気」だからこそ実現できる様々な未来の可能性を思い描けるようになったそうだ。

 さて、最後に取材を通して印象的だったのは、実に楽しそうに仕事に取り組む一徳さんの姿であるが、そのルーツを少々探ってみた。

一徳さんの入社は10年前に遡る。結婚を機に帰郷したというが、もともと電気屋に興味は全くなかったそうだ。しかし、お父さんである浪江代表から常々「電気屋は楽しいからやった方がいいぞ」と語りかけられていたそうで、そういったことも家業を継ぐきっかけにはなったと話す。「仕事はしんどい、厳しいとかそんな風に言われていたら誰が継ぐかと思いますよね。基本的に父は前向きですので、今こうやってポジティブに楽しみながら仕事に取り組めるのは父の影響だと思います」と話す。
町の電気屋さんのみならず、後継者問題に悩む経営者も多いだろう。前向きに、楽しみながら仕事に取り組む姿勢というのは、分かってはいても、こと身内になるとなかなか難しいものだと考えさせられる。しかし、自らそういった姿を見せることが大切で、案外最も効果のある方法なのかも知れない。 最後に、浪江代表からのアドバイスである。「商工会は事業の役にたつ制度や情報を沢山もっているので、その情報等を仕入れるためにはまず自ら率先して足を運んでみる必要があります。商工会も、その情報を積極的に会員企業の方々に還元できるように頑張ってほしい」とのお言葉を頂いた。

取扱説明書や保証書も大切だが、それ以上に大切なことはもっと身近なところにあるのかもしれない。両者の話を伺っていてそんな風に感じることができた。

 

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