サーモカメラを用いた安全・安心な「断熱リフォーム」の原点は、建築士を取得するよりさらに以前に遡る。近年、世間を騒がせていた住宅の化学物質やシックハウス症候群に関心のあった今西さんは、ホルムアルデヒドやVOCなど住宅にまつわる有害物質を測定する専用のガス検知装置を取り寄せ、様々なメーカーの建材を独自に調べ、そのデータを集積したという。
その背景には、「本来、人を守り、安らぎを与えるはずの住宅が、人に害を及ぼす存在であってはならない」という思いがあった。一方で、有害物質を出さないクリーンな建材(自然素材)に着目し、展示会などがあるたびに紹介をしていたという。しかし、当時は建築士の資格も持っていなかったため、周囲からは不思議な目で見られ、ほとんど相手にされなかったという。
「子供のアトピーをはじめ、自閉症や多動症も、報告によると住宅に使われている化学物質が関係しているケースがあると言われています。お年寄りはヒートショックや熱中症が脅威ですし、それらを未然に防ぐためにも、皆さんに正しい情報を知ってもらわなければならない。でも、そのためには、情報を発信する人が必要ですよね。他の人がやらないなら、自分でやろう。そう決めた」と建築士を取得したもう一つの理由を教えてくれた。さらに、「見た目のきれいさだけに走って、夢のマイホームの有害物質に汚染され、医療費などにお金が言ったら元も子もないですから」とも話す。
無論、自身が手掛けた住宅も、ガス検知装置やサーモカメラの対象となる。どれほど気を付けていても、測定の際にはやはり緊張するそうだ。しかし、「嘘がつけないからこそ、精度の高い施工や建材選びができる」と、依頼主の安心・安全が保障できるメリットを語ってくれた。