知恵の経営報告書の作成で、自社の長所と短所を理解できたという善基さん。基本的にお客様からのご要望には、お応えできるように努め、様々な織布製造に対応できる一方で、その多品種対応ゆえにかかる手間__例えば、織機の設定の変更や、製造ラインの調整などの作業効率をもっと精査し、改善していかなければと話す。そのために、まずは各工程の予定や納期を今よりしっかりと詰めていき、社内間でもっと共有できる仕組み作りを目指している。
さらに、過去20数年に渡って製造開発してきた製品の「糸」と「織り」の資料帳をデータベース化していく予定ともいう。同資料帳は、長年、同社を支え続けている工場長の知恵と経験が詰まった貴重なノート。「品番」「糸の種類」「たて糸の総本数」「よこ糸とたて糸の密度」「ギア比」「使用織機ナンバー」「たて糸の柄の組織図」等、独自性で他社に差をつける同社の生命線ともいえる情報が詳細に記されている。
現在の織布業界に置いては、生産性を重視するあまりに織機も古いものはどんどんと廃れ、それに伴い熟練の織り子も減少している。最先端の機械にはマネのできない、人の心と技が生きた布を織り続けていくためにどうするか__。それは善基さんに限らず、これからの世代に課せられた共通の使命なのかもしれない。