ステンレス製の蒸気式豆炊き釜は、コンロの火とは異なり、ボイラーの蒸気で鍋の中全体を加熱することで、均一に熱を通せるのが特長。この釜を導入したことによって、これまで以上にふっくらとおいしい小豆を炊けるようになった。
それに加えて可能になったのが、火力やゆで時間の微妙な調整だ。この蒸気釜なら、デジタル表示を確認しながら、1℃単位で温度を緻密に調節することができる。西山さんは、ここでも極めて科学的だ。
「小豆の煮汁には、本来タンニンが含まれており、これを小豆スープにそのまま使っては、渋みや苦みが残り、口当たりが良くありません。そのためまず煮汁からタンニンを取り除く必要があります。タンニンが水分中に溶出してくるのは、小豆を炊く湯が約60℃に達した頃。ここでいったん煮汁を捨て、新たにお湯を足して再び小豆を煮ます。この二番汁なら、渋みや苦みのないすっきりとした味わいの小豆スープができるはずです」
小豆を炊く温度を細かく管理することで、ポリフェノールなどの栄養分は逃さず、タンニンだけを取り除くタイミングをコントロールすることも可能になる。現在、数値データを取りながら、絶妙の温度やゆで時間を探っているところだ。