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サクセスリポート  

株式会社名工技研
〒613-0914 京都市伏見区淀生津町641-1
TEL:075-633-6123    FAX:075-633-6122
http://meiko-giken.com/

平成24年に創業し、冷間鍛造用金型工具の製造・販売で飛躍的な成長を遂げている株式会社名工技研。高い品質の製品を、顧客の求める納期・コストで実現する。当たり前のようで実は実現の難しいこの3つを見事に達成し、顧客の熱い信頼を得る理由を、社長の廣田俊一さんに伺った。

 
 

創業からわずか3年、まさに破竹の勢いで成長を続ける企業がある。八幡市で冷間鍛造製品用金型工具の製造を中心に、多様な金属加工を手がける株式会社名工技研だ。冷間鍛造とは、金型工具を用いて金属材料を常温で圧縮・成形する加工法。熱間鍛造に比べて精度の高い製品を製造できる反面、金属材料の硬度が高く、成形に大きな圧力を必要とするため、金型にも極めて高い硬度と加工精度が求められる。

中でも名工技研が扱うのは、主にボルトやナット、リベット、スピンドルなどの自動車部品の製造に用いられる金型工具。加工の難しい複雑な形状の特殊金型を得意としている。「一度の注文は、数個単位。工場では常時、数百種類の製品を製造しています」と話すのは、代表取締役の廣田俊一さん。名工技研の強みは、それだけ多品種の製品を高い品質で、かつ短納期で製造できるところにある。「設計図に描かれた通りに仕上げるのは、当たり前のこと」と、廣田さんはこともなげに言うが、高硬度材、時には超硬の金属材料を複雑な形状に加工するには、旋盤による粗加工から研磨、仕上げの磨きまで、すべての工程で高い精度を安定して保たなければならない。廣田さんを先頭に、各工程を任されている従業員一人ひとりの技術の高さが、この品質を支えている。

 

廣田さんは、もともと企業で冷間鍛造用金型の製造や機械加工の技術を磨き、平成24年に独立。名工技研を立ち上げた。前職と同じ業界とはいえ、起業当初は顧客の当てもない。先の見えない不安な船出だったが、廣田さんの信念が揺らぐことはなかった。「ものづくり企業にとって一番の営業活動は、製品を見ていただくこと。満足いただける品質と納期、コストを実現すれば、あとはお客様が口コミでお客様を連れて来てくれました」。

名工技研の技術力が知られるようになるにつれ、より難しい加工、緊急を要する短納期の依頼が舞い込むようになった。ある時、それまで取引のなかった企業から突然、「明後日までに自動車用のスピンドルを3本、作ってくれないか」と依頼されたことがある。通常なら早くても納期は数週間後。稼働していた機械を止めて新たにプログラムを設定し直し、製造工程を組み替えると、他の製品の製造に支障をきたすため、普通はできない。名工技研は、普段から製造工程の効率化を徹底し、常に機械にゆとりを確保しておくことで、こうした緊急の依頼にも対応できる体制を整えている。二日後、注文通りに製品を納品し、顧客から驚きと喜びの声を受け取った。「納期だけでなく、品質もコストも厳しい依頼ばかり。それに応えるのは、本当に大変ですよ」という言葉とは裏腹に、廣田さんの顔は楽しそうだ。

 

新たな技術の開発にも貪欲に挑む名工技研は、必要な機械の導入にも積極的だ。そのために八幡市商工会の支援を得て、さまざまな補助金や公的支援を獲得してきた。平成26年度は「京都府中小企業元気印中小企業認定制度」や「中小企業新事業活動促進に基づく経営革新計画」に認定され、現在、支援を受けている。申請書を作成するにあたっては、自社の強みや実績、展望などを整理し、審査担当者を納得させる書類をまとめるために、幾度となく経営支援員の指導を受けた。日頃からさまざまなことを相談し、時には夢や展望を語り、多岐にわたってアドバイスを受ける関係を築いてきたことが、スムーズな支援につながっている。「経営支援員さんとの出会いがなかったら、今の当社はありません」と語るほど、廣田さんの信頼は厚い。

2014年8月、現在の場所に本社工場を移転。工場を拡張して機械を増やし、生産能力を向上させた。「企業規模を大きくすることが目標ではありません。強い企業を目指し、経営体制を強化するのが、次のステップ」と廣田さん。名工技研の今後の成長が、ますます楽しみだ。

 

「品質、納期、コストのすべてにおいてお客様の高い要求に応えていくためには、今以上に技術を磨いていく必要があります」と、語る廣田さん。八幡市商工会の後押しを受けて獲得した公的支援を活用し、新しい機械の導入や改良に積極的に取り組んでいる。

目下の課題に挙げるのが、製造のスピードアップだ。そのために加工機を動かすのに必要なプログラムの開発を進めようとしている。NC旋盤をはじめ名工技研で使用する加工機のほとんどは自動運転で行われるため、どのような形状に加工するかをあらかじめプログラミングする必要があるが、通常こうした機械は大量生産を目的に自動化されており、ひんぱんなプログラムの書き換えを前提としていない。ところが、多品種少量生産が中心の名工技研では、数個単位で加工する製品が変わるため、そのたびにプログラムを書き換えなければならず、手間と時間を大幅に要する。そこで製品が変わるごとに書き換えなくてもいいように演算ソフトを事前に導入する方法などを考え出し、機械メーカーと連携しながら機械の改良を加えている。

また製造プロセスの効率化も図る。それまで粗削り、研磨の二段階で加工していた工程を一つの研磨機で加工できる機械を導入。1台の機械で作業の9割を完結できるようになり、加工時間を短縮するとともに、その工程に割く人も減らすことができた。「こうした新しい研磨機に対応するため、研磨用の砥石の寿命を伸ばす方法も研究開発中です」。

こうして機械の効率化やスピードアップを図ることで、生産性を向上させるとともに、緊急の依頼にも対応できる人材と機械を確保している。

 

しかしどれほど自動化が進んでも、機械を導入すれば、どんな加工もスイッチ一つでできるというわけにはいかない。高い精度を実現するには、材料のセッティングや稼働中の微調整などきめ細かく手を加える必要がある。名工技研の強みは、そうした機械を最大限使いこなす技術の高さにある。

廣田さんを筆頭に8名の従業員が、それぞれ切削や研磨、仕上げ磨きなど各工程を担当する。従業員は、20歳代から30歳代の若い世代が中心。

各担当者に設計図を渡した後は、細かい指示は出さず、それぞれの裁量に任せるのが廣田さんの方針だ。「いちいち私の指示を待って行動したのでは、1日に数百種類もの製品を仕上げることはできません。今何をすべきか、自分で考えて行動してもらわないと」と、その理由を語る。

従業員の技術に寄せられる信頼が厚い分だけ、それに応える責任も重いが、任されることが、従業員のやる気を促すことにつながっている。「もともとクルマや機械をいじるのが好きな従業員ばかり。仕事を任せることで、それぞれが型にはまらず、自由な発想で工夫を凝らしています。従業員が自ら必要な工具を見つけて注文していて、製品が届いて驚くこともあります」。

 

今後さらに収益を高めていくために、まだまだ生産性向上の余地はあると考えている廣田さん。従業員一人ひとりの技術力を高めることで、旋盤、研磨、仕上げの磨きのすべての工程で高い品質を保ちながら製造スピードの向上を図る。また加工機の改良や新しい機械の導入によっても、加工プロセスの一元化や無人化、加工時間の短縮に取り組んでいく。

「お客様にとって依頼しやすい、使いやすい企業になりたい」と廣田さん。どんな要望にも応える高い技術力がなければ、それはできない。これからも研鑽の日々は続いていく。


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