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サクセスリポート  

株式会社 京・美山ゆばゆう豆
〒601-0731 京都府南丹市美山町又林新道下16
TEL:0771-75-0019    FAX:0771-75-0019
http://yuuzu.com

京都府南丹市美山町で、湯葉の製造・卸売業を営む京・美山ゆば ゆう豆。美山の豊かな自然に育まれた大豆と水だけを使った上質の湯葉に定評のある同店が、東山区に湯葉料理店をオープンした。湯葉作りや湯葉料理店にかける思いを代表の太田雄介さんに伺った。

 
 

緑豊かな森林と清流で知られる南丹市美山町で、湯葉製造・卸売業を営む京・美山ゆば ゆう豆は、代表の太田雄介さんが2006年に創業し、今年で9年目を数える。

「どうせならここ美山で採れるものだけを使って湯葉を作りたい」。4年間の修業を経て独立し、生まれ育った美山町での開業を決意した時、そう考えたという太田さん。現在、ゆう豆では美山産の大豆と水だけを使い、無添加で湯葉を作っている。原料は、太田さんが信頼する農家と契約し、丹精込めて育てられた大豆のみ。通常豆乳が沸き立ってくる際、泡を抑えるために入れる消泡剤も、一切使用しない。

顧客は、京都市内の高級料亭やホテルが中心。早朝3時から仕込みを始め、太田さんが自らの手で汲み上げたできたての生湯葉をその日のうちに顧客の元に届ける。太田さんが大切にしているのは、「その店だけの“特別な一品”」を提供すること。「『こんな料理に使うためのこんな湯葉がほしい』といったお客様のご要望をお聞きし、それに最も適した厚みや柔らかさ、形の湯葉を提案します。何度か試食していただいて、ご満足いただいたものを納めています」。

 

湯葉や豆腐を生業とする者にとって、京都はまさに激戦区だ。老舗の料理店には長く取引している卸業者が決まっているのが通常で、後発のゆう豆が販路を開拓するのは容易ではなかった。「ふつうの湯葉を持って営業に行っても、最初は相手にすらしてもらえません。そこで『まず他にはない湯葉を提案しよう』と作り始めたのが、京都産丹波黒の湯葉でした」。

大豆の代わりに黒豆を使った湯葉は、黒豆の風味が豊かに香り、ふつうの湯葉より甘みとコクが増す。また「湯葉で季節を感じてもらえたら」と、青大豆や赤大豆でも湯葉を作った。青大豆を使うと、涼しさを感じさせる夏の青葉のような翡翠色に、また赤大豆を使うと、春、爛漫と咲く桜を思わせるピンク色に染まる。「最初はこうしたユニークな湯葉を『おもしろいね』と取り入れていただき、味に満足していただけると、『じゃあ、ふつうの湯葉も仕入れようか』となる。やがてお客様が他のお店を紹介してくださるようになり、少しずつお客様が増えてきました」。

現在は卸売の他、全国の百貨店での催事やインターネットで、種々の生湯葉や乾燥湯葉、湯葉を使ったロールケーキなども販売している。

 

「日常の食卓に湯葉が並ぶ家は、あまり多くありません。『こんなにおいしい湯葉の食べ方があるんだ』と知ってもらい、ぜひ家庭でも湯葉を食べてもらいたいんです」。かねてからそんな思いを抱いていたという太田さんは、それを形にするべく2015年5月、京都市東山区の八坂神社にほど近い場所に湯葉料理店・東山 ゆう豆をオープンした。老舗ホテルで腕を磨いた料理長と共に最もおいしく湯葉を味わえるメニューを考案し、昼間は御膳、夜は懐石料理を供する。湯葉だけでなく、米や野菜もできるだけ美山産を使用。「美山で採れた季節の食材を食べてほしい」という思いは変わらない。

料理店を開業するにあたっては、京都府などの助成金を活用した。支援制度の紹介や申請書類の作成を支援したのが、南丹市商工会。助成金を活用して展示会に出展するなど、商工会の支援をきっかけに事業の幅が広がっている。「今では、労務管理についてなど、経営に関してわからないことがあれば、商工会に相談しに行っています」と太田さん。「今後事業を展開する上で、専門家派遣などを支援していただけるとありがたい」と期待を寄せる。

東山 ゆう豆では、今夏、豆乳を使ったソフトクリームなどテイクアウト商品を次々新発売した。「これからも新しい商品を作っていくつもりです」と太田さんの意気込みは高い。

 

湯葉料理店・東山 ゆう豆が開業して数ヵ月。営業する中で客層やニーズが明らかになってきた。

「実際に営業して改めて分かったのは、場所柄、観光客、とりわけ外国人のお客様が想像以上に多いことでした。しかし豆腐に比べて湯葉は、外国の方にほとんど知られておらず、現在お客様のほとんどは日本人。外国人のお客様にも興味を持っていただき、暖簾をくぐっていただくために、まずは店前に英語表記のメニューを置こうと考えています。とはいえ“湯葉”を何と訳せばいいのか、翻訳から頭を悩ませているところです」。

お客様を呼び込む工夫と並行して、新しいメニュー作りにも力を注ぐ。目下考案中なのが、外国人に多い菜食主義者向けのメニューだ。

「大豆で作る湯葉の強みを最大限生かせるものと考えて、思いつきました。鰹節のような動物由来の出汁を口にするのも憚(はばか)る厳格なヴィーガンの方にも安心して食べていただける料理をお出ししたいと考えています。動物性の出汁を使わず、コクやうま味を引き出すのが難しいところ。料理長と知恵を絞っています」。

また、夏に販売した豆乳ソフトクリーム以外にも、観光客が行き来する立地を生かしたテイクアウトメニューを増やすことも考えているという。「日本人はもちろん、外国人にも湯葉のおいしさを知っていただき、湯葉の知名度を高めたい」という熱い思いが、太田さんの原動力だ。

 

料理店だけでなく、美山町の京・美山ゆば ゆう豆でも、商品開発に取り組んでいる。「湯葉を知っていただく入口になれば」と、洋菓子店とのコラボレーションで考案されたのが、湯葉ロールケーキ「美山ゆばろおる」だ。牛乳や生クリームの代わりに豆乳を使ってスポンジやクリームを作り、豆乳クリームと一緒に薄い湯葉を巻いて仕上げた。口どけ滑らかな豆乳仕立てのクリームに加え、餅のような食感が新鮮と、インターネット販売などで好評を博している。

「現在も新商品を開発中。近々、湯葉の佃煮を発売する予定です。インターネット通販だけでなく、料理店でも販売するべく、販売許可の取得など準備を整えているところです」と、太田さん。

事業を成長させていくには、新たな販路の開拓も欠かせない。2014年、京都府の助成金を獲得したことで、初めて展示会に出展するチャンスを得た。「新たなお客様と出会うきっかけになったことはもちろんですが、さまざまな業種・企業の方と交流する機会を得て、人脈や視野が広がったことも、大きな収穫でした」と、太田さんは手ごたえを語る。

 

「将来は、美山町でも料理店を開きたい」。太田さんの夢はますます大きくなっている。いずれは自社で大豆畑を確保し、大豆の栽培から湯葉作り・販売、さらに湯葉料理の提供まで、すべて自社でまかなうことを構想している。「京・美山ゆば ゆう豆」ブランドを確立するのが、太田さんの目標だ。

そのために早急に取り組まなければならないこととして、人材確保・育成を挙げた。湯葉製造は夜明け前から午前中にかけてが最も忙しい。この時間帯に人材を確保するのは、容易ではない。また現在は、納得できる品質を保つため、太田さんが一人で行っている湯葉の汲み上げ作業を担うことができる職人を育てることも課題だという太田さん。

「同じ夢を持って、たゆまず努力してくれる意欲あふれる若い人と一緒にやりたいですね」と待望している。


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