海外に向けて事業拡大を図るクスカは、設備・人材の増強にも取り組んでいる。オールハンドメイドだけに1日に生産できる量は限られている。職人一人あたり、ネクタイで3、4本しか織れない。生産量を増やすためには、織機と織り手を増やすことが不可欠だ。
「今年、新たに手機(てばた)を2台導入し、織機の数は14台になりました。続いて2台を導入する予定。今後5年計画で、さらなる設備投資を考えています」。
設備の増強に合わせ、人材も現在の9名から2〜3倍に増やしたいという。手仕事の魅力に惹かれ、手織り職人を志望してクスカの門を叩く若者は少なくない。
「そんな意欲ある人を職人に育てる環境があるのが、織物の産地として300年の歴史を築いてきた丹後ならではです」と、楠さん。
京都府織物・機械金属センターでは、糸や織物の知識から機の織り方までを1年間かけて指導する研修を開講している。クスカに入社した社員は、仕事をしながら研修に通って機織りの基礎技術を身につけ、職人としての腕を磨いている。
「将来的には、糸を紡ぐところから染め、織り、縫製まですべて自社でまかなう体制を整えたい」と、構想を膨らませる楠さん。
「“KUSKA”ブランドの認知度を世界で高め、いつかここ丹後に自社工場兼店舗を構えたい。当社の製品を求めて、世界中から人が丹後を訪れるようになったら最高です」。
「丹後から世界へ」。“KUSKA”のブランド名と共にタグに刻印される“All Handmade in Tango”にも、そんなクスカの意気込みが込められている。