「愛栽家族」の新店舗のオープン、ガーデンサービス事業の立ち上げと続くアグロス・カワモトの目覚ましい躍進の背景には、「三人の息子たちそれぞれに確かな事業を引き継ぎたい」という河本さんの切なる思いがある。
「三人がいずれも家業に携わってくれることは嬉しい限りですが、それゆえに、どのように事業を継承するかが、悩みでもあります」と打ち明けた河本さん。木津川市商工会からアドバイスや支援を受けながら、数年にわたってスムーズな事業継承の方法を模索してきた。
「それぞれがんばっている三人の中から一人だけを後継者に選ぶのは、難しい。さまざまなご意見や助言をいただき、熟考を重ねた結果、各人に一任できるよう会社を代表する事業を三つ育てようと決めました」。
「正解」のない難しい課題にどうやって答えを導き出したのか。河本さんはこう話す。「一人で悩むのではなく、さまざまな人や機関に相談し、知恵を借りたことが今につながっています」。
木津市商工会から紹介され、セミナーや講演会に参加したのもその一つだ。講演会場で講師と話し、直接アドバイスを受けたこともあったという。
契機となったのは、京都府が実施している「知恵の経営」実践モデル認証制度に応募したこと。「知恵の経営」とは、売上や収益を伸ばすための方策を見つけるマネジメントツールので、「知恵の経営」報告書を作成し、それに基づいた経営を行うことで目的の達成を目指すものだ。
「『事業継承』を事業課題にすえて報告書をまとめる過程で、初めて自社の歴史を振り返り、強みや弱みを整理できた。そこから新規事業の芽も見えてきました」と、客観的に事業を見直すことで新たな道が開けたと語った。