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サクセスリポート  

hair salon ARY
〒627-0034 京都府京丹後市大宮町周枳1767
TEL:0772-66-3661    FAX:0772-66-3661


2015年11月、京丹後市にオープンしたhair salon ARY。美容室検索予約サイトを活用した集客と、「低価格でハイクオリティー」をモットーとした施術により着実にファンを増やしている。開業までの約10年間、東京で経験を積んできた代表の田邊知広さんに、その経緯やビジョンを聞いた。

 
 

京丹後市の幹線道路、国道312号線沿いに佇むhair salon ARY。約120の理美容店がある同市のなかでも、半径2キロ圏内に十数店舗が点在する激戦区にありながら、オープンしてわずか半年で、2人で月に約250名を施術する人気店となった。

代表の田邊知広さんは神戸市出身。美容専門学校卒業後10年間は東京の美容室で、故郷での独立開業を夢見ながら腕を磨いてきた。京丹後市に目を向けるきっかけとなったのは、東京で同様の経験を積み、現在共に店に立つ同市出身の妻・有紗さんとの出会いだ。何度か訪れるうちに、神戸や東京にはない人と人との距離の近さに惹かれるようになったと言う。「集客において大きな影響力を持つ『生の口コミ』が広がりやすい地域であれば、より高い勝算を見込める。そう考え出店を決意しました」と、田邊さん。2015年7月に引っ越し、約4か月間の準備期間を経て開店に至った。

 

同店の特徴の一つは、「低価格でハイクオリティー」というモットーに基づいた価格と技術のバランスにある。メニュー価格は、「無理せず通ってもらえるように」と、一般的な価格よりも2割ほど低めに設定。「たとえば白髪染め。理想は月1回だけど、経済的な理由から2ヵ月に1回に抑えている方は少なくありません。そういう方に、1ヵ月半に1回くらいのペースで来ていただけたら」と、田邊さんは語る。施術においては、東京の人気サロンで培った知識、感性、技術を余すところなく発揮。新しい薬剤などをフレキシブルに取り入れつつ、流行のスタイルを含めた幅広いバリエーションの中から、プロならではの視点で髪質や要望、生活スタイルに合うスタイルを提案している。

そしてもう一つは、日本最大級の美容専門検索予約サイトを活用している点。20〜30代女性をメインユーザーに持ち、首都圏では集客の軸にもなっている媒体だ。割引クーポンを使ってネット予約できるため、価格面での差別化を図る同店には最適の集客ツールと言えるだろう。また口コミ情報も掲載されており、生の口コミが届かないエリアにも同店の魅力をアピールすることができる。

こうした顧客満足度向上に重点を置いたサービス・集客法を実践した成果は、顧客データを分析すれば一目瞭然だ。美容室のリピーター率は4〜5割とされるが、同店は6〜7割をキープ。顧客の約半数が美容専門検索予約サイトを利用しており、周辺市町や他県から足を運ぶ顧客は全体の約2割にのぼっている。

 

順調に顧客数を伸ばし、多忙な日々を送る田邊さん。ただ、特に創業に向けた準備を進める過程では、いくつもの壁が立ちはだかったと言う。その要所要所でサポートを行ってきたのが、京丹後市商工会だ。経営支援員の勧めで同商工会主催の「創業塾」を受講したことで、経営について本格的に学べたこと、かねてより集客ツールとして検討していたネットの有効性を確認できたことは大きい。田邊さんは、「創業3年以内に約7割が廃業するという事実を知ったのも創業塾。経営者になるという自覚を持ち、覚悟を決めるという意味でも貴重な機会になったと思います」と、振り返る。加えて商工会からの紹介・助言により、市の創業補助金で採択され、創業塾で作成した事業計画で日本政策金融公庫からの融資も獲得。リスクを最小限に抑えることができた。

現在はキャパシティを上げるべく、スタッフを募集中だ。「まずは人材を育て、店舗を拡大していきたい。そしていつか、京丹後市の美容業界に刺激を与えられるような存在になることが目標です」と、意気込む。人として、経営者として、たゆみない成長を続ける田邊さんのさらなる飛躍に期待したい。

 

田邊さんはかつて東京で、年間約2000人の施術をこなしてきた。そうした経験の賜物でもあるスピーディな施術は、同店の人気を支える強みの一つだ。ただ顧客を惹きつける本当の魅力は、価格設定などに見られる顧客本位の姿勢が、その流れるような施術の過程においても貫かれていることにこそある。

新規顧客への施術は、ヘア診断からスタートする。髪質等を把握・説明したうえで、髪型への要望に加えて、髪の手入れに関する習慣も丁寧に聞き取る。

「すると約8割の方が、朝、寝ぐせを直す以外には何もしないと答えます。その場合に私が最優先するのは、“手間がかからない”こと。普通に乾かすだけでさまになる、まとまりやすい髪型を提案します。スタイリングに手間がかかっても希望の髪型にチャレンジしたいという方には、必要に応じて、ブラシの入れ方や巻き方などのアドバイスをします」

希望を聞くだけにとどまらず、合う髪型か否かを考えてくれる。施術して終わりではなく、普段も同様にセットできるよう心を配ってくれる。加えて、「変化を楽しんでほしい」との思いと豊富な経験から繰り出されるアイデアにより、思いがけない“出合い”もある。そんな安心感、ワクワク感から生まれた信頼が、月250名の集客と高いリピート率を実現する原動力となっているのだろう。

 

顧客に安心感を与えているのはソフト面だけではない。そのハード面からも、顧客本位の精神を垣間見ることができる。

白を基調としたシンプルな外観・店内を彩るのは、有紗さんが見立てた花やグリーン。壁の高い位置に掛けられたテレビには絶妙の音量で洋画が映し出され、耳にさわらないBGMの役割を果たしている。そして待合スペースの一角には、本格的なマッサージチェア。「お子さんのカットを待つ間などに使ってもらえたら」と考え設置した。低めの棚でさりげなく仕切られていて、気兼ねなく座ることができる。

「無理せず通ってもらえるように」という田邊さんの言葉を体現するかのような、気を張らずにふらりと訪れることができる、居心地のよい空間。多くの顧客をリピートさせているのは、リーズナブルな価格設定だけではないはずだ。

 

京丹後市商工会主催の「創業塾」は、さまざまな業種の人々と出会い、グループワークなどを通じて刺激を受ける機会ともなった。その仲間との交流は、今続いていると言う。

「互いの店を行き来している人もいます。相手は飲食店を営んでいますが、本当に美味しかったので、当店のお客様にもお勧めしています。本当にいいものを伝える。それが口コミだと思います」と、田邊さん。その言葉は、本当にいいサービスを提供しなければならないという覚悟のあらわれと言えるだろう。

 

「出店地域の検討に動き始めた当時、創業や経営、その支援に関する知識は全くと言ってよいほどありませんでした」と、田邊さん。すべて手探りで、何事に対しても確固たる自信は持てなかったと言う。「ここでならやっていける」と初めて思えたのは、情報収集のため京丹後市を訪れたときのことだ。その熱心な対応に、同市における人と人との距離の近さも強く実感することができた。

「さらに市の紹介で商工会の存在を知り、経営支援員という何でも相談できる存在を得ることができました。常に連絡を取り合い、こちらの動きを把握してくれていたので、ここぞという局面で的確なアドバイスをいただくことができました。この出会いがなければ、知識のないまま間違った選択をしてしまうこともあったかもしれません。今があるのは、商工会のバックアップがあったからこそだと感じています」

今もその関係は続いている。スタッフを補充して時間的な余裕ができれば、商工会の記帳指導サービスを活用し、日々の経理業務や財務管理について一から指導を受ける予定だ。

自分の店を持つという第一の夢は叶った。次に目指すのは、「地域で一番に名が挙がる店になること」だ。新たな夢の実現に向けた道のりは、まだ始まったばかり。そのための強固な礎が、有紗さん、そして商工会との二人三脚により、着実に築かれつつある。

 
 
経営支援員のメッセージ     

田邊夫妻に対して抱いた第一印象は、“都会から来たファッションリーダー”。「低価格でハイクオリティーなサービスの提供」という経営理念をお持ちであることから、今後は業界のリーダーカンパニーとして京丹後を盛り上げてくれると思っています。

「田邊さんはIターン経営者でありながら、たとえば好きなお酒を飲みながらまちづくりについて語り合うなど、京丹後らしい付き合いを楽しむことができる魅力的な方です。その柔軟性を大いに発揮して、これからも有紗さんと共にがんばってくれることを願っています。

京丹後市商工会 経営支援員 岡 朋博


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