こうした商品開発力は、養父さんの熱意と努力の賜物だ。代行店としていくつもの出織をまとめていた事業を転換し、自社工場を建設して内製中心に切り替えた時、力織機について徹底的に勉強した。
「織物に合わせて糸のテンションなどを調整するためには、織機の構造や扱い方を熟知しました」。
それだけでなく、養父さんは織物の素材や織り方にも精通していく。絹糸から金銀糸までさまざまな素材に加え、多種多様な織物の種類、織物の図案を写し、型紙の役割を果たす「紋紙」の作り方など、自社が請け負う仕事のみならず、すべての製造工程についても知識を深めた。こうした知識が、新商品の開発や顧客への提案の際のアイデアの源泉になっている。
「例えば紋紙の知識があれば、お客様から商品の図柄を見せられた時、『この図柄なら、この織り方の方が美しく効率的に織れます』とか『この織り模様の美しさを際立たせるなら、デザインをもう少しシンプルにした方がいい』などと、こちらから提案することができます。そうしてメリットを提供することで、下請け業を脱却し、メーカーと対等な『パートナー』になりたいと考えています」と語る。
最近は、製造の知識を持たない西陣の若い経営者から「教えてほしい」と請われることが増えてきたという養父さん。それが新しい事業の可能性も生んでいる。
「お客様であるメーカーの製造現場で、製造や管理、人材育成などのノウハウを提供してほしいという依頼を受けました。今後は、そうしたソフトを提供することも考えていきたい」と展望する。