お客様の要望に応えられる企業でありたい。
その思いで竹林整備に挑戦。
〒619-1303 京都府相楽郡笠置町大字笠置小字芝崎52
TEL:0743-95-2626 FAX:0743-95-2633
https://www.nakagawa1913.com/
高い技術力を強みに土木・建築業を営む
1913(大正2)年の創業以来、100年以上にわたって笠置町で土木・建築業を営んできた仲川組。山間地域で多くの困難な治山・治水工事に携わってきた経験と技術力を強みに、今日まで事業を継続してきた。「形状が複雑で地盤も不安定な斜面を切り開く山間部の工事では、土砂の動きを見極めて掘削の深さや順序を判断するなど、安全、正確に工事を進める計画力や専門的な技術が不可欠です」と代表取締役の中井仁司さんは話す。
また同社は土木工事だけでなく、住宅の新築やリフォーム、エクステリアの工事も手がける。とりわけ近年は、高齢化に伴ってバリアフリー化のためのリフォームの需要が増えている。中井さんは自ら福祉住環境コーディネーターの資格を取得。単に依頼に応えるだけでなく、要望の背景にある課題や目的を見定め、それを解決・達成する方法を提案することを重視している。
加えてお客さまに寄り添う取り組みとして長く続けているのが、完成イメージ図を提供するサービスだ。「設計図では完成した姿を想像しにくいだろうと思い、施工前の写真を加工して施工後のイメージ画像を作成し、お見せしています。色や大きさなどをイメージできるとお客さまに喜ばれています」。
竹林の伐採・粉砕を行う新規事業で需要拡大
中井さんが4代目を継承し、約10年前に新たな事業として立ち上げたのが、竹林整備だ。「きっかけは放置竹林に困っていると相談を受けたこと。当時は定年退職などで社員数が減っていたことに加えて、公共工事の受注も右肩下がり。そんな中で、小規模の現場に特化した竹林整備に着目しました」と中井さんは振り返る。新たな顧客を募るためにホームページを開設し、竹林整備の実績を公開したところ反響を呼び、徐々に受注を増やしていった。
竹林伐採だけでなく、もう一つユニークな取り組みも行っている。それが伐採した竹を粉砕処理する「整理伐」だ。通常伐採した竹は処分場に持ち込み、焼却処理するか野積みすることになる。お客さまの負担を減らせないかと考えて思いついたのが、竹を現地で粉砕処理することだった。「展示会などを探し回って狭小な場所にも持ち込める小型の樹木粉砕機を見つけ、これなら導入できると決意しました」と中井さん。竹を粉砕処理すれば容量を8分の1程に減らせる。さらにそれを伐採後の更地に敷き詰めることで場所も取らず、整備コストを抑えることが可能になった。
商工会の支えを得て設備導入・新規事業を実現
整備伐の需要の増加に伴って、2015(平成27)年には樹木粉砕機を新型に更新し、昨年は特殊運搬車両を導入した同社。こうした設備導入に必要な資金を調達するための融資や助成金の相談に乗り、サポートしているのが笠置町商工会だ。「商工会の青年部に入った時から30年以上のつきあいです。どんなことも気軽に相談できる存在が身近にいるのはありがたいですね」と中井さん。商工会が関係する地域のイベントなどにも積極的に協力し、長年信頼関係を築いてきた。「密に関係を築いているから教えてもらえることも少なくありません。地域の若い経営者にも商工会をもっと利用してもらえたらと思います」と語る。
「これからもお客様のご要望に応えられる企業であり続けたい」と将来を展望した中井さん。時代を超えてニーズに応え続けるために、新たな挑戦も続けていく。
大正、昭和、平成、令和と笠置地域に貢献
明治、大正と日本の近代化に伴って全国に鉄道が敷設されていった時代、国鉄関西本線の建設にあたり、工事を担ったのが仲川組の始まりだ。以来、戦後の復興期、高度経済成長期を経て、交通網の整備や山間地域の開拓、治山・治水に携わり、笠置地域のインフラ構築に貢献してきた。
大規模な災害時にも持ち前の技術力を発揮して復旧に尽力し、いち早い復興に寄与するなど、山間地域の開拓工事で培ってきた経験と技術力は折り紙付きだ。
1995(平成7)年には現代表取締役の中井仁司さんが現場監督を務め、山間の急峻な谷のすぐそばに3基の砂防ダムを建設するという難工事を成功させた。その功績が評価され、京都府下のすべての治山事業の中から優秀賞を受賞している。
父である先代の急逝に伴って中井仁司さんが事業を引き継いだのは、2001(平成13)年のこと。以来、従来の事業を守りながらも時代の変化に応じて経営革新に取り組み、竹林整備などにも事業を広げてきた。
試行錯誤を経て竹林の伐採・粉砕を事業化
「竹林整備事業を始めるにあたっては、伐採した竹を粉砕する『整理伐』に目をつけたものの、初めての試みだけに『これはいける』と自信を持てるまでには時間がかかりました」と中井さん。
まずリースで樹木粉砕機を手に入れ、お客様の許可を得て伐採した竹で粉砕実験を実施。どのくらいの量の竹を粉砕するのにどのくらい時間がかかるか、どの程度の細かさに粉砕するのがいいか、また粉砕の音は気にならないかなど、試行錯誤を重ねる中で「これならお客様のニーズに応えられる」という手ごたえを得たという。
自社ホームページで実績を公開してからは、それまで縁のなかったお客さまからの依頼も増加。私有地や企業の敷地、学校などさまざまな竹林の整備を請負っている。依頼を受ければ、京都市域だけでなく、奈良県や大阪府といった周辺地域や兵庫県や愛知県にもトラックに樹木粉砕機を積んで駆け付ける。「うっそうと茂る竹林がなくなり、お客様はもちろん『周りが明るくなった』と地域の住民の方々にも喜んでもらえるのが嬉しいですね」と中井さんは言う。
粉砕後の竹チップの商品化を目指す
さらに現在、新たな試みとして、粉砕後の竹チップを土壌改良剤として利用することを思いつき、商品化に取り組んでいる。
「竹チップを再利用することで整理伐の付加価値をさらに高め、コスト削減などの形でお客様に還元できたらと考えています」と中井さん。目下、農家の協力を得て、竹チップを撒いた土壌で作物を栽培し、その効果の確かめようとしている。「効果が実証できれば、思い切って商品化を進めたい」と意気込む。
今後もお客様の期待に応え続けていくために、課題は技術継承だという中井さん。「長年一緒に仕事をしてきた協力会社も含めて、他に負けない技術力が当社の要です。しかしそうした技術者たちの高齢化によって慢性的な人出不足に陥っているのが悩み。長い年月をかけて培ってきた熟練の技術を若い世代にも継承するため、人材教育にも力を入れていきたいと考えています」と語る。
創業から100年を超え、さらに次の100年に向けて、仲川組の挑戦は続く。